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就活のお部屋

就活について現実を語り合いましょう

320 COMMENTS

ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第92回
第2部分析編
第1章:社会階層
その6:民間における支援機関
(3)中学受験塾と障害者エージェントの社会的構造の相似①

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-8/#comment-12676

何回かに渡って私自身の中学受験の話をしてきました。なんのこっちゃと思われたでしょうが、今回からようやく伏線の回収に入ります。

■中学受験と構造が似ている

私は体験編に書いた、「人材業界第二位のグループが運営するエージェント=P」を利用してみて思ったことがあります。

それは

「この社会的構造は何かに似ている」
「そうだ、中学受験にそっくりだ」

私は障害者を扱う人材エージェントを利用しているときの感覚と、中学受験の進学塾に通っていた時の感覚がとても良く似ていることに気がつきました。そして改めて考察してみると、社会的な構造がとても似ていることが分かってきました。

■特定のエージェントによる独占構造

都市部の障害者採用においては、求人票やエージェントが抱える人材の質、あるいは求職する障害者の転職実績は少数のエージェントの独占構造が確立されている印象です。

印象と書かざるを得ないのは理由があって、この領域に関して公的な社会統計が見当たらないからです。また統計らしきものがあったとしても

・エージェントによる自社の利用者に限定した統計データ
・エージェントを使って転職した当事者が、自分で集計した統計データを出している

といった状態です。いずれも公的統計ではありません。そもそも障害者雇用の統計数値の元データは往々にして

・ハローワークを利用して就職、転職した人の集計
・各企業に就労する障害者の集計(手帳を持つ人対象、毎年6月1日に集計)

です。

だから私自身は、民間のエージェントに関する公的統計を見つけることができませんでした。ご存知の方は教えてください。

また、エージェントは進学塾のように

「今年は一部上場企業に何名入社!」
「○○企業に何名、△△企業に何名入社・・・」

という具合に、個別企業に対する内定実績数値を出しません。進学塾だと「筑駒中○○名合格」とか「灘中○○名合格」などと宣伝しますが、エージェントはそうではないです。例外はあれ、そういう内定者情報はあまり出さない方が一般的です。

私の体験と他の当事者の発信から推測するに、例えば発達障害者なら独占的な位置を占めているのは数社のエージェントの模様です。特に、私が使った「業界第2位企業の子会社=P」がおそらくトップであろうことは、体験編でも示唆してきました。

こういった少数のエージェントの独占構造に気がついている当事者は、私が活動した当時はそう多くありませんでした。これは実際にエージェントを利用し、転職に成功しないと分かりません。

実際、この構造に気がついていた当事者にリアルで出会ったのは一人だけです。それは「ハッタツBar」で同じ席にいた当事者の方です。その時テーブルには私を含めて4人の当事者がいました。しかし私とその方以外の当事者は必ずしもエージェント経由で転職したわけでもないらしく、この構造を知る由もありません。

私はその気がついていた当事者の方と、Barのテーブル越しに頷きあったのです。「エージェントPだけ別格だよね」と。

また、第一部体験編で述べた「当事者が創ったエージェント=G」の関係者たちでさえ、この構造は知りませんでした。ですので、逆に私が彼らに教えたくらいです。彼らは有名企業で就労経験のある有能なハッタツ当事者達でしたから、私の言葉で瞬時に現実を理解しましたが。私が状況を伝えたら「やっぱり結局そうなるか」みたいな顔をしていました。

■中学受験の大手塾と同じ構造

このような少数のエージェントの独占構造というのは、首都圏の中学受験でいうなら、有名な4つの塾(SAPIX・早稲田アカデミー・日能研・四谷大塚)が大手として知られているような状態と似ています。関西圏なら、灘中学の受験で独占的実績のある浜学園と希学園でしょうか。私は関西圏にあまり詳しくないのですが。

もちろんそれ以外の小さい塾も多数ありますが、合格者はこの4つ、特に最難関校の合格者となるとSAPIXから数多く輩出されます。それを猛追するのが早稲アカとのことです。

そしてエージェントPは障害者雇用の世界において、ちょうど中学受験におけるSAPIXみたいな位置づけです。

■次回以降も続きます

次回以降も、エージェントと中学受験塾の社会的構造の相似について解説を続けます。だから私は伏線として長々と中学受験の話をしたのです。

それほどに障害者エージェントと中学受験塾はとても良く似ています。だから中学受験塾がどういう場所なのか、そして中学受験がどういう世界か描写する必要があったのです。両者を比較したいからです。

次回以降もよろしくお願い致します。

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ブルー

結局は少数の大手が業界を支配するようになるのはよくあることですね。

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<IT大手(世界)>
・グーグル
・アマゾン
・フェイスブック
・アップル
(+マイクロソフト)

<大学受験(国内)>
・駿台
・河合
・東進
(代ゼミは規模縮小で、ここから撤退した模様)

<法律事務所(国内)>
・西村あさひ
・アンダーソン・毛利・友常
・長島・大野・常松
・森・濱田松本
・TMI

<会計事務所(世界)>
・デロイトトーマツ
・EY(アーンスト&ヤング)
・KPMG
・PWC(プライスウォーターハウスクーパース)

<メガギャラリー(世界)>

・ペース
・ガゴシアン
・ハウザー&ワース
・デイヴィッド・ツヴィルナー

————————————————————————————————–

障害者の人材市場も同様の帰結らしいと感じました。

返信する
ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第91回
第2部分析編
第1章:社会階層
その6:民間における支援機関
(2)伏線:中学受験②

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-8/#comment-12667

恐縮ですが、中学受験の話の2回目です。この話は伏線であって、次回以降に回収します。くどいですが、もうしばらくだけお付き合いください。

■中学受験文化

中学受験文化というのは地域が限定されたものです。はっきり言えば大都市圏固有の文化です。地方のさらに僻地(ごめんなさい)においてはそもそも私立中学や一貫校の数が少ないので、高校受験が人生の第一次選抜となります。

この中学受験は世の中に情報そのものは流布しています。最近だとマンガの「二月の勝者」等です。

ただ、いくら流布する情報を集めたところで、中学受験は中に入って体験してみないと実態が掴みにくいです。進学塾も同様です。例えば書籍「塾歴社会」が出版されるまで、都市部の中学受験と無縁の人達はSAPIX(関西では浜学園や希学園)や鉄緑会の強さを知らないままだったのです。

SAPIXは私が中学受験の勉強をしていた小学生の頃、その前身のTAPの頃から知っています。私が中学受験の勉強をしていた頃に、SAPIXは新興勢力として登場したのです。そしてSAPIXのレベルの高さは当時からなんとなく感じていました。えらくレベルの高い塾が出できたな・・・と小学生ながらに感じました。

鉄緑会も小学生の頃から知っていました。私は小学生の頃から、そこが高偏差値の中高一貫校の優秀な生徒を対象に、苛烈に勉強させる塾であることも知っていました。そして「東大に行くためとはいえ、おっかないところだなあ」と子供心に思っていました。

だから私が中学受験をしてから四半世紀以上が経過して、

——————————————————————-
0.往々にして東大生は、小3までは公文式か水泳
1.小4からSAPIX(関西なら浜学園)に通って中学受験
2.中1から高3まで鉄緑会
3.東大理Ⅲ

(※現実には、0から3までのステップで死者もとい、脱落者が大多数。完遂者は稀。また、別にこのルートを経なくても理Ⅲに受かる人がいるのは当然のこと)
——————————————————————-

の最上位層ルートが確立されていたことを知った時、私は全然驚かなかったのです。「やっぱり」としか思いませんでした。

しかし世間では、書籍「塾歴社会」の内容は衝撃的に受け止めた人も多かったみたいです。つまり日本の知的エリート層の最上位=東京大学理科Ⅲ類合格者=は、特定少数の進学塾が独占的に養成しているという実態そのものを知らない人が多かった様子でした。

これを踏まえて、ここから先は2つの話題を扱います。それは機会の差と情報の遮断です。

■都市部と地方での機会の差

まず、都市部と地方の機会の差です。私はたまたま大都市圏に生まれて中学受験をさせてもらえる環境がありました。でも、地方ではそもそも私立一貫校の数が少ないです。結果として中学受験をする人はとても限られています。

しかしそこからトップクラスの中学校に受かる人は限られています。だから中学受験で難関校を目指してしまうと、とんでもなく過酷な生活が待っています。これはやってみると分かります。しかも難関校だけに落ちる人の方が多いです。私も某トップ校に落ちました。

しかし中学受験でトップ校に受かった場合、6年後に例えば東京大学に受かる確率が高い環境で過ごすことができます。実際に東京大学の合格者の65%程度は中高一貫の進学校で占められています。

■中と外で情報遮断が起こる

それから当たり前ですが、中の人と外の人で情報遮断が起きます。中学受験経験者=中の人=にとっては当たり前の世界観でも、中学受験文化のない地域の人=外の人=はそもそも蚊帳の外です。そして何かの拍子に中の実態を知ってぶったまげる・・・。

こういう事は世の中の基本ですが、中学受験もまたそうなのです。

中学受験もまた、「外の人」には実態がわかりにくいし、ましてや特定の進学塾の独占構造は、「塾歴社会」出版以前にはとても分かりにくかったのです。つまり情報の遮断が生まれていたのです。

実は他にもお伝えしたいことがありますが、それは後に回収します。まずは機会の差と情報の遮断を踏まえて先へ行きます。

今回はここまでです。

長ったらしい中学受験の話にお付き合い頂きまして、ありがとうございました。次回から伏線を回収していきます。

(次回へ続く)

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浅見淳子

ブルーさん

ありがとうございます。

本当に中受は苛烈なものになっているのですね・・・。

コロナ禍を機にリモートワーカーが増えて、いい環境を求めて地方移住する人もいるようですが、小田原くらいまで逃げると子どもを中受に巻き込まずにすむそうです。茅ヶ崎くらいまでだと引っかかっちゃうんですって。

自分が中受した一番のメリットは「公立に行かなくてよかった」っていうところかなあと思います。

伏線回収を楽しみにしています。

返信する
ブルー

浅見さん

コメントをありがとうございます。

>本当に中受は苛烈

→私の頃は中受=(往々にして)難関校を目指すもの、でした。だからやたらと苛烈なイメージでした。

しかし、あれから数十年が経過し、中受も多様化しましたね。SNSや書籍には「ゆる受験」「ボリュゾ」(=ボリュームゾーンの略。難関校には手が届かない中間層にいる大多数の児童)など、中堅校を目指す人達向けのキーワードが並んでいます。

そもそも大多数の子は難関校には縁がないわけで、でもだからこそ中受は私の頃から現代に至るプロセスで多様化してきたとも言えます。

そして多様化の最たるものが、発達障害やそれに準ずる特性を持つ子達の中学受験です。「発達障害に理解のある私立中学」に関する情報を収集なさっておられる親御様の姿も、SNSでは見受けるようになりました。この話題も中学受験の界隈ではよく情報交換されている様子です。

>公立に行かなくてよかった

公立中学や、それに伴う内申点制度、あるいは高校受験をどう考えるかも、SNSや書籍では花盛りの話題ですね。

次回以降もよろしくお願い致します。

返信する
ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第90回
第2部分析編
第1章:社会階層
その6:民間における支援機関
(1)伏線:中学受験①

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-8/#comment-12510

今回から、また事例を観ます。花風社さんのサイトで恐縮ですが、また他社の書籍からです。

■塾歴社会

受験関係で、「塾歴社会」という書籍があります。

—————————————————————————–
・ルポ 塾歴社会
日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体
おおたとしまさ著・幻冬舎新書
——————————————————————————

これは都市圏の中高一貫の有名進学校や、東京大学の理科Ⅲ類(医学部)の合格者が特定の進学塾、はっきりいえばSAPIXと鉄緑会の出身者で独占されている実態を書籍にしたものです。

毎年3月になると、東京大学の合格者ランキングが週刊誌やメディアに出ます。トップ10の顔ぶれは、細かい変動はあれどだいたい毎年同じです。

しかし、それらの超進学校の生徒たちの多くは中学受験でSAPIX(関西なら浜学園か希学園)に通い、中学から高校では鉄緑会に通っています。つまり東大に合格実績を多く出している中高一貫校に限定すると、「学校は違うが塾が一緒」なのです。

なお、東京大学全体に目を向けると、浪人も含めて最も合格者を出している予備校は駿台とのことです。ただし理三に限定すると鉄緑会が合格者の半数近くを独占している状態とのことです。

この書籍の出版後、テレビ番組やyou tubeでもこの実態は取り上げられるようになりました。

私は「塾歴社会」を購読した後、こう思いました。

「やっぱり結局そうなったか」と。

なぜそう感じたかというと、私自身が大都市圏で中学受験をしたからです。私の経験上、書籍「塾歴社会」で述べられていることは自然な帰結です。

ここで少し私自身の中学受験の話をします。これもこの連載の伏線で、後々回収致しますので少しお付き合いください。

■私の中学受験

私は大都市圏で中学受験をしました。私の世代は団塊ジュニア世代で人数が多く、競争は過酷でした。

私は小学4年から6年生まで、日曜も含めて週に何日か進学塾に通いました。最盛期の平日は、小学校の授業以外で最低1日6時間以上は勉強したでしょうか。小学生だというのに。

そして休日の午前中は毎週、某大手塾の日曜テストを受けました。この日曜テストは中学受験生が毎週繰り返し多数受けるテストで、受験生の中における自分の相対的位置づけが分かるようになっていました。そして午後は自分の通っている塾でまた授業でした。

平日は、小学校の授業が終わるとお弁当を持って塾に行きました。17時から授業&演習があって、19時からはみんなで楽しくお弁当の時間でした。お弁当を食べ終わると21時までまた授業&演習でした。

そして夏休みにも冬休みにも講習があります。夏は塾の夏合宿で、他の塾生と寝食をともにしました。合宿では先生の怪談話があって、それがホントに怖かったです。それと、合宿先の旅館の風呂の更衣室に、パンツを忘れる人が男女ともに必ずいました。

そして消灯後に部屋で寝ないで他の人達と話をしていると、塾の先生やスタッフが巡回してきてえらく怒られました。みんなやんちゃ盛りの小学生であることに変わりはありませんでした。

そして年末年始も講習でした。正月講習では、塾の仲間と昼休みに神社に初詣に行ったりもしました。でも神社は参拝客でごったがえしていて、拝殿にまでたどり着けませんでした。私たちは塾の午後の授業に遅れるので、やむなく警備にあたっていた警官に頼み、警備用のルートから神社を脱出させてもらいました。

中学受験の日々は過酷でした。しかし私はそれなりに楽しんでいた面もありました。当時通っていた進学塾の「明るく楽しく勉強する」という方針に救われていた面もありました。実際、雰囲気が明るい塾でした。

今はもうその塾はありません。しかしその塾は中学受験の世界でそれなりに語り継がれる塾となりました。教育システムが独特※だったにも関わらず、大きな実績を出していたからです。

特にこの塾は創業者の出身校であった、私立M中学に抜群の強みがありました。当時は私立M中学の新入生のうち、半数弱はこの塾から来ていました。実際「M中特訓クラス」は塾の中でも最も大きな教室を使っていて、人がひしめき合っていました。当然、メインの授業担当は創業者でした。

創業者は東大理学部の出身で、中学受験の主戦場である算数の教え方が上手でした。余談ですが、塩水を混ぜ合わせて濃度を算出する問題の解法である「塩水天秤算」はこの創業者が開発したという噂が塾の中で流れていました。本当かどうかは知りませんが。

そんな過酷な日々を過ごした3年間でしたが、それでも第一志望には受かりませんでした。その学校は誰もが名前を知っている超進学校の一つでした。毎年毎年、東京大学の合格者数でトップ10に入っている学校です。今思えば、私は超進学校の中学入試を突破するには、算数の資質、つまり理系的資質が足りませんでした。

さらに言えば、いくら努力をしたところで最上位層には絶対に到達できないことも、小学生ながらに体験から分かっていました。

ともあれ、私自身の中学受験の結果に後悔はありません。当時の私は子供なりに全力を尽くしました。

中学受験というとどうしても親主導な部分もあるのですが、私は当時の小さな自我を全て自発的に中学受験に傾けました。つらいことも多かったですが、中学受験をやめたいと思ったことはありません。(身の程もわきまえず)高度なことを学ぶことは当時から好きでした。

この連載で問題にしたいのは、そのプロセスにおける進学塾、そしてそもそもの中学受験文化です。

(つづく)

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ブルー

※分かる人にだけ書きますが、先生に「公式あだ名」がついていたあの塾です。児童は先生に、あだ名&タメ語で話しかけます。

そして授業では早く問題を解く競争や、チーム対抗で正解数を競ってゲーム方式で児童達を盛り上げました。

そして授業で頑張るとその分だけ先生から「ハンコ」をもらえ、そのハンコを「ハンコ台帳」に集めると、景品(文房具が多かった)と交換ができました。

ちなみに、私はハンコを集めていませんでした。私はこまっしゃくれたガキだったので「ハンコを集めなくてもやる気の維持ができる」と思っていました。数年に渡る受験生活の途中で、何度か息切れはしましたが、やめたいと思ったことはなかったです。

ハンコに関してはもう一つあって、特に男の子がいたずらをしたり、授業態度が悪かったりすると、ペナルティとしてハンコを没収されました。ハンコ台帳に押されていたハンコ一覧の上に、先生が二重線を引くのです。「こらーっ!ハンコ3個没収!!!」みたいな感じでした。

また、授業の合間の休憩中はお菓子を食べて良かったし、授業中もジュース類などなら机の上に置いておいて良かったので、この塾の教室はいつもスナック菓子の匂いが充満していたのを覚えています。

それもまた明るい子供の空間という感じがして、居心地が良かったです。裏を返せばそういう息抜きがないとやっていられないほど、中学受験の難関校を目指すプロセスは過酷でした。だからこそこの塾は、とにかく「明るく楽しく」ということに注力していました。

だからこの塾に通う児童たちは、小学校の友人と塾の友人と、2種類の友人たちを持つことにもなりました。

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ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第89回
第2部分析編
第1章:社会階層
その5:障害者エージェントの人材市場理解
③情報リテラシー

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-8/#comment-12494

■情報の分類

私が障害者人材に対するエージェントの階層分けの話をこのサイトに書いている理由は、SNSや口コミで流れてくる情報を分類して頂きたいからです。

それぞれの階層は、障害程度も、就労スタンスも、生産性も、必要な配慮も、働く場所も、それぞれ違います。

ところがSNSではすべての層の話が一斉に流れて来ます。だから話の前提からして異なっていて、混沌とした状態です。そういう状態で障害者雇用について会話をしても、実は互いに違う階層を想定していたりします。

■噛み合わない討論

SNSの会話で、障害者雇用に関して想定している階層が違うと討論会になったりします。しかし罵り合わないタイプの討論会であったとしても、最後には「お互い分かり合えませんね」となったりします。

例えば私が目撃した事例だと、福祉系就労支援者の人と障害者雇用を担当する企業人事のX討論会です。支援者の人はどうやら前回述べた第3層から第2層までを前提にしていて、人事担当は第1層と第2層を前提にしている様子でした。

そうすると討論会の図式が以下になります。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
テーマ:合理的配慮と要求水準について
・もっと具体的なエピソードがあったのですが、詳細内容は省略

〇就労支援者(福祉系):
・就労スタンス:配慮重視かつ定着重視
(第2層から第3層を無意識に想定しているか)

〇企業人事(障害者雇用担当)
・就労スタンス:活躍/生産性重視。「健常者と一緒に働けるか」を重視
(第1層から第2層上位※を無意識に想定しているか)

★階層分けは障害者人材の優劣を表しませんが、便宜上「第2層上位」としてあります
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

この場合は当然、考えの相違と会話のすれ違いが起きるのですが、お互いに言っていること自体はそれなりに筋が通っていたりします。それでもすれ違う原因は、採用を想定している障害者の階層がズレていることです。

結局、人事と支援者は今一つ話が嚙み合わず、最後には人事が「すみません、私はどうしても福祉系のお立場に立って考えることができない、ということが分かりました」と言い出してしまいました。

これは人事が非を認めたとか、間違っていたということではありません。支援者に対して「あなたの言っていることをどうしても理解してあげることができないので、これ以上は討論を建設的にはできない」と言っているのです。

■討論が噛み合わない原因

2人が噛み合わなかった原因は、想定している人材階層がズレていたこともそうなのですが、支援者側が第1層、つまり企業で健常者同様に働いている層を想像できなかったことも一因だと思っています。ということは、第1層の要求水準が分かりません。

ひょっとすると支援者の人は、就労支援所で第3層に行きたい人(=主に特例子会社での就労を想定)と日常的に接しているのかもしれません。この支援者からは、障害者雇用では合理的配慮をしっかり用意すべきという規範を感じました。

しかし企業で健常者に混じって働いている第1層は、全ての局面で必ず配慮があるわけでもないのが現実です。第1層の合理的配慮は、第2層から第3層に比べれば少なめです。そして勤務態度や生産力に対する要求水準も上がります。

支援者は人事が発言する(おそらく)第1層の要求水準に対して「それは配慮が足りない」と言っていたように記憶しています。私は個人的に、支援者の言い分は第2層から第3層なら妥当かも知れないと思いました。しかし第1層には当てはまらないと感じました。

そして人事は支援者に対して「それでは水準が低い」という趣旨のことを言っていました。私は経験的に人事の言い分も分かります。第1層は健常者に混じって働くからです。

すれ違いの原因があったとしたら、お互いに異なる人材階層を想定して会話したことです。

つまり人事や支援者も、障害者人材市場の全体を必ずしも想定できるわけでもなく、どうしても日頃自分が接している層を前提として考えがちだと推測されます。

■障害者雇用の言説あるある

こういうことは障害者雇用の言説ではよくありそうです。だからこのサイトに残しました。この記事に触れた方の情報リテラシーを向上させる手助けになれば幸いです。

エージェントがどのように企業をコンサルティングしているか、もっと詳しく知りたい方は(花風社さんのサイトで恐縮ですが)以前ご紹介した4冊を購入することをお勧めします。

なお以前にも述べたように、大都市圏でエージェントを使って障害者採用に挑む成人当事者の方は、購入なさることを強く推奨します。

このシリーズは以上です。次回からまた違う話題を扱います。ただし、エージェント関連ではあります。

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【参考/引用文献】

★障害者雇用は経営課題だった!

・失敗事例から学ぶ、障害者の活躍セオリー
・テレワーク雇用導入で、はたらく人材が変わる、はたらき方が変わる
・特例子会社の戦略的活用による雇用・事業拡大
・経営視点×フレームワークで考える、これからの障害者採用とマネジメント

編著:パーソルチャレンジ
(※パーソルチャレンジは、現在はパーソルダイバースと社名変更)

出版:good book(グーテンブック)
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ブルー

【編集後記】

私自身は今の会社で、

第2層(契約社員/障害者雇用)→第1層(正社員/障害者雇用)→一般枠/正社員

というキャリアパスであったように思います。今振り返ればですが。結果としてそうなった感じです。今の勤務先は要求水準が非常に高く、私は今思えば第2層から仕事をスタートさせました。いきなり第1層から働くことは能力的に無理でした。

そういう経験があったので、当初の私は支援者の人の言い分が企業の現実にそぐわないものだと感じていました。就労支援所に勤めているらしいこの方は、企業の障害者雇用の実態は想像がついていないであろうと思いました。

しかしこれも私が第2層~第1層の経験で支援者を見ているからであって、この方とは観点がそもそも違うらしいことに気が付きました。

そしてエージェントの階層分けを知った際に、この支援者はおそらく「第3層に行きたい人」の就労観で障害者雇用を捉えているらしいと推測しました。

だからこの記事では、支援者の人に対して「社会の理解ガー」という文脈で批判をするという構成にしていません。正誤ではなく相違というコンセプトで記事を構成しました。

また、この支援者の人が「社会の理解ガー」群ほどは極端な事を言っていなかったこともこの構成で記事を書いた理由です。

とはいえ、この支援者の方も若干「ダイバーシティガー」みたいな発言がありました。ダイバーシティに関してもパーソルは書籍内で見解を述べています。そして私自身も実際に勤務してみて気が付いたことがあります。それはまた別の記事で独立して扱います。

とはいえ「社会の理解ガー」も、最近なら「ダイバーシティガー」も、障害者雇用における第1層と第2層の現実を体感したことがない人達から発生している言説なのではないかという気もします。

なぜならば、私が出会った一般企業で健常者に混じって勤務している成人当事者、つまり第1層から第2層にいた人達はそういうことを言わなかったからです。

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ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第88回
第2部分析編
第1章:社会階層
その5:障害者エージェントの人材市場理解
②層別分解の具体的内容

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-8/#comment-12487

前回予告した通り、今回は特に以下の書籍から参考資料として内容を引用します。

———————————————————–
「失敗事例から学ぶ~」p.81からp.90
「経営視点フレームワーク」P.40~P43 、P.71
———————————————————–

結論から書くと、パーソルは障害者人材を3層に分けて把握することを顧客企業に提唱しています。以下がその区分けです。

■障害者人材の階層分け

—————————————————————————————————
◎第一層:はたらく能力や職務能力が高い層

→職務経験があり、就業意欲が高く一定以上の職務能力を持つ。総合職や一般職を担う。配慮は必要だが、健常者社員とほぼ同じように働ける。障害者向けに切り出した業務ではなく既存の業務を担当。

◎第二層:一定の配慮が必要だが、本業に資するユーティリティ業務で貢献可能な層

→意欲や能力は限定されるものの、アシスタント職として十分な障害配慮を受けながら安定してはたらける層。できる範囲のことはきっちりやり遂げるイメージ。一般配属の他に、工場ラインや事務センター、特例子会社での集合雇用のケースもある。チームとしての生産性が問われる層。

◎第三層:安定就労や障害配慮が重視される層

→相対的に職務能力に制約があり、障害配慮の提供が重視される層。本社、支社などの集合雇用で簡易な作業系業務にあたる場合や、特例子会社で農作業などを担うケースがある。活躍よりも定着重視の層。

この層は特例子会社や事務センターなどの集合雇用でも、特に作業系の業務を中心に担当する。業務成果よりも職場定着のための施策が優先され、安定してはたらき続けるための配慮提供が重視される。

※この階層分けは優劣や得失、差異を決めるものではない
—————————————————————————————————

注意点としては、この3層は便宜上の分け方なので、例えば体調などによって層の移動ができることが前提です。

それから、この3層は就労へのスタンスも違います。第1層が活躍重視で意欲の高い層、第3層が定着重視で自分のペースを守って働きたい層となります。第2層はその中間層という位置づけとのことです。

そして実際の雇用人口の分布ですが、第1層と第2層で障害者雇用の9割程度、それも身体障碍者が多いという状態だそうです。ということは、特例子会社による雇用(第3層)は全体の1割未満となります。※

(※厚生労働省「令和元年 障害者雇用状況の集計結果」同「平成29年度障害者の職業紹介状況等」からパーソルが計算とのこと)

■人口比について

これはパーソル側が計算式を出していないのですが、以下のような見解とのことです。

————————————————–
・障害者枠で就労している人材の8割は、第1層と推測
・障害者人材市場には第2層が多く、母集団形成しやすいという見解
—————————————————

第1層と第2層の比率は、私自身は書籍から読み取りにくかったです。どこにもその数字はなかったように思います。ただし厚労省の統計上の合計値は出ていて、先ほどの段落で述べたように障害者雇用においては第1層と第2層で9割程度とのことでした。

パーソルによれば、この9割の内訳は総合職や一般職あるいはアシスタントなどの業務レベルが比較的高い人材とのことです。

私の私見なのですが、パーソルが「障害枠人材の8割は第1層」と推測する背景として、パーソルが取引している企業のレベルが高いことも挙げられると思います。

実際にはパーソルの言うように、人材市場には第2層の人々も結構なボリュームでいると推測されますから、雇用されている第2層の人数はもう少し多いのかも知れません。

そして第3層(主に特例子会社に勤務する人々)が少ないのは、厚生省の統計からも比較的確度高く言えることらしいです。

■世間の誤解

世間の障害者雇用のイメージは第2層と第3層が主体です。しかしパーソルはそれを明確に「誤解である」としています。先ほども述べたように、障害者採用の統計上のメインは第1層と第2層です。

私自身も、パーソルが推定するように「障害枠の8割が第1層」なのかは分からないにせよ、世間が思っているよりは第1層がずっと多いはずだという肌感覚を持っています。

つまり企業社会においては世間が思うよりもずっと多くの障害者の人が、健常者と同じ空間で働いているであろうということです。

(続く)

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ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第87回
第2部分析編
第1章:社会階層
その5:障害者エージェントの人材市場理解
①参考書籍について

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-8/#comment-12301

■情報の壁

そもそも一般的な書籍であれSNSであれ、そしてマスコミであれ、障害者雇用に関しては日常的に情報が出回っています。

しかし前回までに述べたように、私が障害者人材マーケットで実際に活動して感じたことは、障害者人材市場が階層別に分断されていることでした。これを発信する人は数が限られます。

またSNSでは、障害者人材市場のうち往々にして自分が把握できる階層だけ(=私が言う「フロアN階」)を前提にした発言も見受けられます。それは人材市場の全てではありません。その発言はひょっとすると他のフロアでは当てはまらないかも知れません。

このように障害者人材市場は中で活動してみないと分かりにくいこともいくつかあります。そこは外から見ている人達にとって情報の壁になっています。この連載はそういった情報の壁に対応するためのものです。

■エージェントの人材市場理解

この連載の執筆にあたり収集した参考書籍の中に、当時の私とは違った方法で障害者の人材市場を層別分解して把握しているシリーズ書籍を見つけました。それは大手人材エージェントの書籍です。

私はその書籍を読んだ際に「やはりこうしないと障害者の人材市場は多様性が強すぎて把握が難しいのだな」とつくづく感じました。

以下のシリーズです。4冊あります。

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★障害者雇用は経営課題だった!

・失敗事例から学ぶ、障害者の活躍セオリー
・テレワーク雇用導入で、はたらく人材が変わる、はたらき方が変わる
・特例子会社の戦略的活用による雇用・事業拡大
・経営視点×フレームワークで考える、これからの障害者採用とマネジメント

編著:パーソルチャレンジ
(※パーソルチャレンジは、現在はパーソルダイバースと社名変更)

出版:good book(グーテンブック)
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これらは求職者向けの書籍でなく採用側、そして経営側に向けたものです。内容は、障害者採用を始めようとする企業に対してエージェントが日頃コンサルティングしている内容のポイントや事例をまとめた書籍です。

このシリーズによると、パーソルは得意先企業に対して障害者採用のコンサルティングをする際に、多様な障害者を層別に分解して捉えることを提案しているのだそうです。

念のため述べると、エージェントの市場分解と私の市場分解は方法が違います。それでも人材市場を層別に分解していることは共通しています。そうしないと障害者人材市場は多様性が強すぎて、整理して理解できないからです。

■大企業はこの考え方に触れている

第1部体験編で、「エージェントP」の転職ミニセミナー兼、模擬面接会の様子を描写しました。あれはあくまでも求職者に対しての情報提供でしたから、人材市場の層別分解の話は出てきませんでした。障害者雇用を取り巻く社会情勢の解説はありましたが、層別分解の話はなかったです。

だから、私も活動を終えてこれらの書籍を購入してやっと知ったのです。採用側の書籍は活動中も購入していましたが、エージェントが書籍を出しているとは思っていませんでした。これは盲点でした。分かっていれば絶対に買うからです。

先ほどの書籍を書いたパーソルダイバースは業界最大手の一角ですから、いろいろな大企業に障害者の人材紹介サービスを提供しています。もしよろしければパーソルが運営する障害者雇用のサイト「dodaチャレンジ」をご覧になってみてください。「ご紹介企業例」や「企業の障害者雇用インタビュー」にはそうそうたる有名大企業が並んでいます。

それらこそは私がこの連載で述べている、「口コミサイト・オープンワークにおける総合評点で3.0を超える」企業群です。中には4.0越えのトップorニッチトップ企業もあるでしょう。つまり世間一般で言われる障害者雇用を成立させるだけの体力がある企業群です。入社のハードルは、たとえ障害者雇用であっても高いです。

パーソルがこれらの有名大企業を得意先に持っているということは、多くの大企業は少なくとも一度はパーソル式の市場分解の考え方に触れているということです。

もちろん採用というのは経営において極めて重要ですから、各企業なりに個別の採用戦略を組んでいるとは思います。それでもパーソルの層別分解法は、多くの大企業の障害者採用の施策の前提として機能していることが推測されます。

それを次回以降にご案内します。

■活動中の成人の方は購入を推奨します

花風社さんのサイトで他社の本を売ってしまい恐縮ですが、特に大都市圏でエージェントを使って障害者雇用に挑む成人の方は、このシリーズを御購入されることを強く推奨します。

貴殿が面接に挑む大企業が、障害者の人材市場を理解する上で何を前提にしているかを知った上で面接に挑まれることを強く推奨します。

しかもこの内容はエージェントから求職者には公開されません。エージェントは採用及び経営側にのみ伝えています。だから本を買うしかありません。しかし、本を買えば知ることができます。

先ほどの4冊は別に裏情報ではありません。アマゾンでフツーに売っているオモテ情報です。それにも関わらず、おそらくは限られた人しか読んでいないです。なぜそう思うかというと、障害者雇用に関してこれらの本を読んでいたらああいう感じにはならないな・・・と思う言説をちらほら見かけることがあるからです。

詳しくは次々回に述べます。

■経営側の観点

エージェントが出版している書籍群に気が付かない人が一定数いる理由は、おそらくこれらが経営目線で書かれているからだと思われます。タイトルからしてそんな感じだから、求職者もスルーしてしまいます。ひょっとすると、医療・福祉/支援・教育系の人達もスルーしているかも知れません。当事者もスルーしている人がいるでしょう。

しかし、そもそもこの連載「人材市場サバイバル」は求職者の視点を最重視していません。もちろん(元)求職者の体験談と分析ではあるのですが、前提にしているのは経営側の観点です。

そして求職者側も、採用選抜に挑むにあたっては経営側の観点を前提に活動をしたいところです。そういうわけで経営側・採用側に向けて執筆されたエージェントのシリーズ書籍を取り上げます。

今回は以上です。次回以降、エージェントによる人材市場の層別分解について、書籍の引用と解説を行います。

(次回に続く)

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ブルー

ごめんなさい、のっけから内容の修正です。

この書籍シリーズの初版年月を改めて見ると、私が転職活動を終え、既に今の勤務先で働いている時代に出版されていました。「盲点」以前にまだ出版されていなかったので、当時の私は手に入れていなかっただけの話でした。大変失礼致しました。

ただ、だからと言って現在のパーソルがこの書籍シリーズの内容をDODAチャレンジを利用する求職者に伝えているのかはちょっと疑問符がつくところです。私がなぜ疑問を呈するかというと、完全に経営・採用側に振り切った内容だからです。

そういう点で、大都市圏でエージェントを使って活動をされる成人当事者の方にこの本の購入を強く推奨することに変わりはありません。このシリーズのタイトルにもあるように、民間企業の障害者雇用は経営側の論理が全ての前提だからです。

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ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第86回
第2部分析編
第1章:社会階層_ その4:階層の確定

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-8/#comment-12236

受験や就活のような競争的選抜というライフイベントは、個人の所属する社会階層を確定する作用を持っています。

例えば、教育社会学の世界で良く言われるのは高校受験です。どこの高校に行くかということと、どういう進路になるかは相関関係があります。

もっとはっきり書けば、高校の偏差値は進学する大学の偏差値帯と統計的に相関関係があります。これは教育社会学では「高校トラック」として概念化され、データの蓄積があります。中学受験をしない大多数の人にとっては進学する高校が、社会的地位の最初の確定作業になる傾向があるということです。

また、ここでは詳しく扱いませんがその後の大学受験や就活、そして婚活も似たような作用があります。

個人の社会的地位が確定する作用というのは、障害者雇用にもあります。私は活動当初から、それを意識して行っていました。

当時の私は、手帳を使って障害者人材市場の審判を仰ぎ、自分がいるべき職場と社会階層に泳ぎつくのだと考えていました。そしてその結果は市場の審判を経て決定したものだから、自分にとって最も見合った場所であると考えていました。裏を返せば、手帳と障害者人材市場を使わないと、社会的に自分を適切な位置へ運べないと考えていました。

■ライフイベントに一発逆転はない

また、こういう選抜を伴うライフイベントについては、つくづく感じていたことがあります。それは一発逆転がないことです。結果として一発逆転に見えたとしても、結果を出すには年単位の準備がなされています。受験であれ、就活であれそうです。それはこの連載でずっと述べてきました。

■外資を目指すのをやめる

私は手帳を使った転職活動のさなかに、今後の自分が所属する社会階層を決断した瞬間がありました。それは外資系企業を進路の候補から外した時です。

当時、ある程度働けるコンディションの成人当事者は外資系企業に行くのが高年収への近道だとされていました。外資系はダイバーシティや障害者雇用に対する意識が国内企業とは全く違うことも当事者の間では言われていました。

実際に私は、某外資系企業でダイバーシティ&インクルージョンの研究をする人々と一緒に勉強会を行ったことがありました。外資ではそれ専用の職種があったりするのです。

確かにその人達はハッタツ当事者への理解度が極めて高く、国内企業とは次元が違いました。ただしその外資系企業は日本の障害者雇用の先駆けですから、そこと国内企業を比べるのはどうかという話もあるのですが。

また外資系の障害者雇用の年収帯も、国内企業の障害者雇用の最高年収金額が、外資系の障害者雇用の年収帯のスタートラインという相場でした。そして一部の成人当事者は、年収●●●●万を達成していました。

それでも私は、ある時点で外資系企業を目指すのをやめました。

まず、サポートしてもらっていたエージェントPが極めて優秀だったので、その範疇、つまり国内企業で活動をすることにしました。

Pが持ってくる求人票の品質は、国内企業としては良いものでした。そして何より私を担当してくれたエージェントのカウンセラーのサポートが本当に親身だったこともあって、このエージェントから離れて活動をするのは危ないと感じました。

もうひとつは、私はどうしてもやりたい仕事かつ、行きたい業界がありました。外資系うんぬんよりもそれを優先することにしました。それは私が都市部で活動ができたことなど、環境に恵まれた上で行える、とても贅沢なことなのですが。

結局、私はエージェントPを経由して、当時の第一志望だった国内企業・・・すなわち今の勤務先にやってきました。

これにより私は、年収●●●●万ではなくなりました。その道を結果として自分で断ちました。つまり人材市場における「フロア2階(の中~上層)」の社会階層で就職活動をし、その年収帯の社会階層に所属していくことを決断した結果です。

■父の言葉

そういえば、私が活動を始めるにあたり、父はこんな事を言っていました。

ブルーの父:
「新しい仕事は焦らず決めればいいよ。あまりお金を追いかけてもおかしな事になるし・・・。それと、障害者雇用に面白い仕事なんかありはしない。それは期待するな。向こうは本音では雇いたくないけど(法定雇用率があるので)仕方なく雇うのだから」

私はこの活動で年収を上げたいとは思っていました。それ以前が少々安かったからです。大手企業の障害枠を狙ってみようとも思っていました。しかし、やたらに年収を追って自分のバランスをおかしくしても本末転倒です。そこは確かに父の言う通りであると今でも思います。

結局、今の業界と仕事、そして今の社会階層と年収が、人材市場が私に対して導き出した最適のバランスです。それは私にとっても納得のいくものでした。大変贅沢ですが、年収よりも人生のバランスを最適化することを選べる状況ではあったのです。

その状況の大きな前提になっているのが、私が大都市圏に生まれたこと、そして偏差値は高くなくても大学を卒業していたことの2つであることは、この連載の前提編で述べた通りです。

今回は以上です。

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ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第85回
第2部分析編
第1章:社会階層_ その3:階層多様性

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-8/#comment-12198

■当事者はあらゆる社会階層にいる

前回述べたことは、人材市場を社会階層から観た事例です。成人当事者も社会に生きていますから、社会の階層構造からは逃れられません。そして当事者はあらゆる社会階層、言い換えれば全ての年収階層に生きています。

かつてこのサイトでアンチ考察をやった際に、彼らの嫌いな現実として社会階層を取り上げました。しかし定型の人であっても、いろいろな体験をした上である程度勉強をしないと社会階層はなかなか理解できません。なぜならば自分が直接体験できるのは自分が所属する社会階層とその周辺だけだからです。

ましてや障害者採用の階層構造は非常に観えにくいです。ですからこの件は絶対にこのサイトに残しておこうと思っていました。

障害者採用を経験した人も、障害者の人材市場を構造的に理解できる人とできない人がいます。前回述べたように、社会階層というのは下から上が分かりにくいからです。そして、階層が離れすぎると互いに世界観の外になります。

■多様性=所属する社会階層が多様なこと

これらの現実を踏まえると、私自身は成人当事者の多様性において最初に踏まえるべきことは、所属する社会階層の多様性だと考えています。

つまり私は当事者の多様性を理解する際に、特性や個性や才能といった類の文脈を最初に持ってこないということです。最初に考えるのは特性の多様さではなく、所属する社会階層の多様性です。それは最も俯瞰的な視座から観た、発達障害の人の多様性だと考えるからです。

なお歯止めをかけておきますが、発達障害の人が属する社会階層は本人だけに全ての原因を帰することもできません。

その当事者が属する社会階層は、当人が発揮できる生産力や付加価値によって決まってきます。ただし発揮できる生産性は、例えば障害程度など所与のものの影響も大きいです。これはエージェントも承知していることです。

今回はいつもより短いですが、以上です。

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ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第84回
第2部分析編
第1章:社会階層_ その2:社会階層の性質

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-8/#comment-12177

■3階建ての市場の性質

前回、私が障害者の人材市場を年収帯別に3階建てに分けて考えていた話をしました。ざっくりまとめると以下になります。

——————————————————————————-
フロア3階:高年収帯(主に外資IT)

フロア2階:そこそこの年収帯(主にエージェントの非公開求人)

フロア1階:自立は厳しい~ギリギリ自立可能の年収帯
(主に公開求人。アルバイト・派遣が多く含まれる)
——————————————————————————–

それぞれの市場は私が観る限り接点がありません。フロアごとに世界が断絶しています。

例えば通常の3階建ての建物は、階段やエレベーターでフロア間を移動できます。

しかし障害者の人材市場は、フロア間に階段やエレベーターがありません。つまり当事者が自分で認識して移動せざるを得ません。

しかしここに重大な問題があります。あるフロアで活動している当事者がいたとして、他のフロアが観えるかは人によるのです。

■社会階層の性質

先ほどの3階建ての人材市場は年収帯別に分かれている以上、現実として活動する当事者がどの社会階層に所属するかを決定します。そして社会階層の最も重要な性質として、

——————————————————-
★違う社会階層のことは観えない
★特に、下から上は認知の外
——————————————————-

ということがあります。

観えないというのは、見たくても見えないということではありません。それとは本質的に違います。

観えないというのは「完全に認知の外」になるということです。他の社会階層は想像もつかないということです。よって違う社会階層に所属している人同士は分断され、断絶します。

また社会階層の特に重要な性質として、下の階層から上の階層が非常に分かりにくいということが挙げられます。自分より上の社会階層のことは想像がつかないです。

上から下はまだギリギリわかります。しかし上から見たときに、あまりに下過ぎる、つまり自分の位置から落差が大きくなると分からなくなります。

■私の場合

当時の私の場合も、「下から上が分かりにくい」「上から下はまだ分かる」が当てはまります。

例えば、私の場合はフロアの2階が主な活動場所でしたから、フロア1階のことはまあまあ分かっていました。

でも、私の上にいるフロア3階の人材市場のことは、当時は霞がかかっていてよく観えませんでした。仕方なく、3階での活動に成功した外資系IT勤務の当事者(年収●●●●万)の方にアドバイスをもらう形で間接的に垣間見ただけです。

また残念なことに、フロア1階で活動している方の中にはフロア2階のことが分からない方がおられます。フロア2階の求人票は非公開のものが多く、それはエージェントに登録しないと見られないからです。

しかもこの連載で述べたように都市部にある少数の大手エージェントで求人票を独占しているらしいですから、そのエージェントに登録しないと良い待遇の求人票に巡り合いにくくなります。

しかしフロア1階の人はこういうことが一切分からない人がいます。1階から見て2階は上の階だからです。よってフロア1階で活動して、障害者雇用は年収が低いからと一般枠での活動に切り替える人も出ます。

しかし以前の回で、「障害者雇用だから年収が低い※」というのは間違いだと解説しました。現実は、障害者雇用だから年収が低いのではなくフロア1階の求人票だから年収が低いのです。

2階の求人票は全てではないにせよ、そうでもないものがちらほらあります。そしてフロア3階、特に外資系IT企業の障害者雇用となってくると、これは健常者の水準に照らし合わせても高年収な求人票が登場してきます。

でも、こういうことが分かる当事者と分からない当事者がいます。社会階層の性質として「下から上は往々にして認知の外」だからです。

※「障害者雇用だから年収が低い」は間違い
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-2/#comment-9291

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ブルー

<参考>

かつてXにいらした、障害者雇用担当の人事さんのツイート。

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ハイスキルな転職市場はしっかりあるのに、何故当事者の皆さんが来ないのか不思議という意見も他社人事の方からよく聞きます。支援者や親御さん、支援会社や当事者の甘えがマインドセットを下げているように思えてなりません。
———————————————————————————————

人事さんのご自分でも気がついていない隠れた前提は、「ハイスキル障害者市場はみんな知っているハズ」です。だから「甘えのせいでマインドセットが落ちて、その結果としてチャレンジ精神がなくなっているのではないか」と思っておられます。つまり障害者雇用の人事さんですら、階層間の断絶がそもそも分からないのです。

なぜハイスキル市場に当事者が来ないか。私の答えは、

「ハイスキル市場(=フロア3階)は、ほとんどの障害者よりも上の社会階層に位置しているので、下から上が観えないという社会階層の性質に基づき、そもそも認知の外になるから」

です。

多くの当事者は、そういうハイスキル障害者市場(フロア3階)があることがそもそも想像できないのです。そして人事でさえもその「想像できない」が「想像できない」のです。

さらに、同じ人事さんと、障害者と思われる方のやりとりです。

————————————————————————————————
(ある、障害者と思われる方。ツイートから抜粋)

障害者雇用とか、どうかしてると思う。普通に雇用されている人より高い賃金もらってる人一人もいないし。そういう世界とは離れて、自分で稼ぐ方が楽しい。

————————————————————————————————-

それに対して、先ほどの人事さんの引リツ&返答です。

————————————————————————————————-
(人事さん)

>一人もいないし

障害者雇用のエージェント経由で入社できれば年●●●万(引用者注:健常者でも高年収の水準)は貰えます。身体の方が多いですが、精神の方も一定数存じ上げています。
————————————————————————————————-

ここで引用した、障害者と思われる方の「一人もいないし」ですが、この方が活動した人材市場、及び周りにいる障害者の人たちは、おそらくフロア1階~2階(の下の方)だと思われます。

それに対して人事さんはフロア3階の世界を伝えているのです。

この障害者(と思われる)方は自分で稼げているようで何よりですが、そういう能力を持つ人でさえも自分の活動エリアの上にあるフロア3階は認知できなかったのです。

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シア

こんにちは。
まぁ仕事をするうえでハンディがあるとかないとかの話になってくるので普通に働けるならクローズド?一般枠で済む話ではありますね。

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ブルー

<人材市場サバイバル>
第2部分析編
第1章:社会階層_その1:市場の3階層

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-8/#comment-12135

■第1章の構成

第2部分析編の第1章は、社会階層の観点から障害者の人材市場を考えます。それではまず、私がどのように障害者人材市場を俯瞰していたかをみてみましょう。

■3階建てになっている様子

私は当時、障害者の人材市場がどうも3階建てになっているような気がしていました。つまり人材市場が1階、2階、3階と階層分けして存在しているイメージです。

3つの市場はそれぞれ世界が全く違い、断絶しています。現実としてそれらは障害者が所属する社会階層を決定します。

以下にその3つを記します。これは何かの統計資料に基づくものではなく、私が活動を通じて自然と見出したものです。つまりこの市場観を使うと活動しやすかったということです。これが正しい市場観かどうかは分かりませんが、経験上使いやすい市場観でした。

■市場1階

まずは障害者人材市場の1階です。この市場に集まっている求人票は、都市部で一人暮らし、つまり経済的な自立をするにはちょっと厳しい年収帯です。物凄く節約すれば一人暮らしは可能かも知れません。

主にこの年収帯の求人票は、ハローワークあるいはネット等の公開求人によく見られます。私の活動していた時代には正規雇用もあまりなく、契約社員やアルバイト、派遣といった非正規雇用の求人が多かったように記憶しています。職務の内容としては軽作業と事務系が多かったように思います。

この年収帯の求人票を眼にした当事者達の中には、障害者雇用を諦めて一般枠で働くことを選ぶ人もちらほら見受けました。

■市場2階

続いて、障害者人材市場の2階です。

ここに集まっている求人票は、私が活動した当時、障害者雇用の年収としては、「まあ恩の字~やや高い部類」という感じの求人票が多かったように記憶しています。

とはいえ健常者でも、この価格帯の年収を確保できていれば恩の字ではないかと思っていました。この年収帯の求人票にはエージェントが持つ非公開求人が多くありました。

業務内容としてはオフィス系、すなわちホワイトカラー的な事務作業の求人が目立ちました。私が活動した頃は事務職オープンポジションの求人も多くありました。

そして前述したように、この年収帯で待遇の良い求人票の多くは大手エージェントが保有する非公開求人です。つまりエージェントに登録して初めて内容を確認できます。

これにより市場の現実が当事者以外には見えづらい状態になっています。その現実を可視化する事もこの連載の大きな目的の一つです。

また国内の大手エージェントが扱う求人は、わずかな例外を除いてこの年収帯まででした。

■市場3階

ここは高年収帯の求人票の世界です。はっきり言えば外資系の求人が主体です。年収帯は様々ですが、概ね国内企業の障害者雇用における年収帯の最高額である●●●万円がスタートになります。この金額は、健常者でも稼げれば充分に高収入の部類です。

さらにこの市場3階では、年収●●●●万円への道も開けています。いわゆる「スーパー当事者」への道です。

この市場に入るためには、自分で該当する外資系企業に応募することがセオリーでした。国内エージェントはここの求人をあまり持っていなかったです。

最近では、エージェントの一部で「ハイクラス障害者求人」として、この年収帯の求人票を扱うところも出てきたようです。

■私の経験則です

これらは当時の私の経験則です。私はこのように障害者の人材市場を3フロアとして捉えて活動をしていました。つまりこのようにある程度階層分けしないと、人材市場を整理して把握できなかったのです。

これが、私なりに見出した障害者人材市場の全体像です。

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ブルー

(参考:高年収帯の障害者求人について)

ここに参考情報として、障害者雇用を担当していた人事さんのツイートをつなげて引用します。ただし大変残念ながら、この人事さんは現在アカウントを削除されています。非常に真実味のあるツイートをする人で、エアプではなく間違いなく人事の人だと思われました。私はまだこの方がXにおられた頃に、以下のツイートをスクショしていました。

このツリーの記事で言うと、市場3階、高年収帯のフロアに関する話です。

————————————————————————————————
(以下、引用)

特例子会社を持っていないIT企業やスタートアップ企業だと、発達障害を開示した社員の年収が●●●万を(※引用者注:あと少しで●●●●万)を超えているケースをかなり聞きます。(身近にも●●人以上います)

彼らは努力して土日もスキルアップしているからこそ、今の仕事ができているのです。

そういった企業に入るには、実績とスキル(対人スキル含め)が必要不可欠です。引き抜きも多いですし、一部の発達障害当事者の方が知らないだけで、普通に努力して発達障害を言い訳にせず健常者の方と働いている方はいっぱいいます。

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こじはるファン

ブルーさん

お久しぶりです。

市場1階→市場2階の当事者です。

市場1階(基本給が大卒新卒並みだった代わりに、賞与なしでした。)時代は、
一人暮らしをしていましたが、奨学金の返済もあり、外食はほとんどせず、
首都圏から外に出る旅行はほとんどありませんでした。
また、お昼はコンビニのパン(1食300円ぐらいに抑えていました。)で我慢、休日は自炊が必須でした。
この階層でも、健常者と同等の対人スキル(部活動の経験がないと文句を言われます。)を求めてくる会社もあります。
(私の前職です。)

市場2階になっても、しばらくは奨学金の繰り上げ返済をやっていたので、
首都圏から外に出る旅行は就職後2年ぐらい我慢していました。
この階層になれば、障害のことを隠しても婚活で同世代の女性であれば、会えるチャンスがそこそこあります。
(ご参考までに某大手の相談所だと女性側は東京・神奈川以外では、年収400万円以上に設定している女性が多いです。東京・神奈川だと年収500万~600万円以上を求めていることが多いです。)

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ブルー

こじはるファンさん

ご無沙汰しております。お元気ですか。

一人暮らしで、かつ奨学金の返済をされていたのですか、凄いですね。

そして仰る通り、ある程度仕事以外の活動ができるようになるのは市場2階からですね。市場1階だと一人暮らしの場合はギリギリの生活です。

それとこじはるさんならご存知の通り、就活と婚活は人材市場で活動するという点で本質が同じですよね。第2部で婚活の話を参考情報として出すかどうかは検討中です。

今後も読んで頂けると幸いです。

返信する
ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第82回
第2部分析編_イントロダクション
前回はこちら

https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-7/#comment-11836

連載は第二部分析編に入ります。何を分析するかというと障害者の人材市場です。

なお、浅見さんなどの民間企業の経営者の方にとっては、この第二部の内容はほぼ既知の内容と思われます。

第二部は、内容によっては社会統計の存在しないテーマもあります。つまりそれについては私の主観です。

さらにこの章も、ひと昔前の体験を元にしています。つまり古文書みたいなものです。ただし現代になっても廃れない内容を多く扱う予定です。

この章で扱う現実に気がついている当事者は人数が限られると思われます。ましてやこのように記録に残す人はさらに数が限られるはずです。だからこの章を残します。

次回から宜しくお願い致します。

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シア

今上の甥っ子が就活の学年に入っています。

理系の大学に通っていてエンジニアになるべく勉強してきているのです。
祖父(私の父)がモノを作る仕事をしていたこともあり凸凹あるがそれを見て育っていたと紹介されたことがあったと思います。

彼の祖父は施工者ですが彼自身は機材に興味があり既に複数の資格を勉強しバイトでは現場に出て技術も実践しているそうです。

つまり既に現場で働いているわけではありますが大きな会社に入りたいそうでどういう会社を狙ったらいいか彼の祖父と相談しているのです。
機材などに本当の本当に精通しているのが彼の祖父なので(型番から型式仕様の他・生産工場や原産国を知ることができる人なのです)そこまで詳しい生きた業界地図を持っている人が身近にいるのでそれはそれで武器になると思います。

しかし熱心だと思います。
実際に大学でその分野を勉強しつつ実際に事業者が持つ資格まで勉強して取得しながら現場で既に働いている…そこまで熱心で目的意識があるのかとびっくりします。

彼はそういう世界が好きなようだとはわかってはいましたがこの調子で就活も成功させていってほしいものですね。
しかし自分が学生のころをみわたしてもそんなにここまで熱心なのは見たことないですねぇ。

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浅見淳子

シアさん

今の学生さんたち、就活に熱心だし、インターン制度とかも充実しているみたいです。第二新卒とかもあるし、だいぶ硬直した就活制度が緩んでマッチングを見極める手段が増えてきたんでしょうね。

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ブルー

<社員は社風を表す>

【就活塾 ホワイトアカデミー】
就活で受ける企業、人事の印象で決めても良い?【25卒】
https://www.youtube.com/shorts/ABNktUhLg7U

就活スクールの竹内社長が言っていることは、企業勤務の経験がある人はみな知っている事です。それを学生にも伝えているわけです。

社員は勤務先企業の社風を身に纏っています。企業によって社員の纏っている雰囲気が違いますが、それがその企業の社風です。よって、いい企業は社内の雰囲気もいいです。社員もそのいい雰囲気を身に纏っています。

これは就活だけではなく、例えば営業マンのキャラクターや雰囲気を見て、その企業からモノを買うか否かを決める、といった場面にもあてはまります。

逆に社内の状態がおかしいと、社員の雰囲気もおかしくなります。これは如実に出ます。私にもこんな経験があります。

■面接官が寝ていた

私は就職してから診断されましたから、大学3年生から4年生にかけて一般的な新卒としての就職活動をしています。そして、その就職活動では1社だけですが、面接官が寝ていた企業があります。

それは部屋というよりはブースにて行われるタイプの一次面接でした。担当の面接官は若手の現場社員が2人でした。そして私から向かって左の社員が爆睡していました。

そう、爆睡です。ちょっと居眠りしてしまっている、なんてものではありません。大口を開けて堂々と寝ていました。また、その状態の社員をもう片方の面接官が起こさないのです。

その企業の一次面接は確か20分程度と短く設定されていたように思います。なぜそうなのかはもう忘れました。つまり、ブースの中で流れ作業のように面接をこなしていたわけです。そうすると、

同じような服装で
同じような顔の
同じような年代の就活生が
これまた同じような話をするわけです。

「私は、大学で〇〇〇サークルに所属し、そこで〇〇長の役割を担いつつ・・・」

この作業が無限に繰り返されます。

面接官にとっては、これが羊を数える状態になっていたことは理解できます。当時の私も瞬時に理解しました。それでも寝ている面接官がいる時点で、また寝ている人を起こさない時点で、その企業に行く事をやめました。

それから5年後でしたか、その企業は民事再生法を適用しました。今ではその企業は消滅しています。一事が万事です。

■雰囲気のおかしな部長

また、これは就活の場面ではなく異業種交流会の場のことです。

私は仕事として異業種交流会に出て行ったことがあります。それは名刺交換と自社アピールのための場でした。交流会というよりは、営業のための合同面通しフェスタ、という感じの場でした。

私はその交流会で、ある有名企業の部長と名刺交換をすることになりました。誰もが知っているBtoC企業(大衆消費財)の部長でした。

その部長は大変に雰囲気の悪い人でした。服装にも表情にも、そして体つきにも、なんというか全体的にだらしなくルーズな印象でした。そして有名企業の威を借りて威張っていました。

さらに特徴的だったのは、その部長が纏っている雰囲気でした。

通常、一人の企業人は一つの雰囲気を身に纏っています。一人につき一社の雰囲気です。ところがその部長は、いくつもの空気感を雑然と身に纏っている印象でした。雰囲気がまるでツギハギだらけの印象を受けました。

私はこのような奇妙な空気感の人間を見たことがありませんでした。私は企業人と会う時は、その人が身に纏っている雰囲気で社風も推し量ります。しかしこの部長は雰囲気がしっちゃかめっちゃかなため、社風がさっぱりわかりませんでした。

「あれ?かの有名な〇〇社って、あんな変な人がいるの?」
「有名な〇〇社も、ヤバいのかな・・・」

私はそんなことを思いながら、その日は会場を後にしました。

そしてなんと、その会から1ヶ月後でしたか、件の部長の会社は民事再生法を適用となりました。今ではその会社も消滅しています。いや、正確には社名だけがブランド名として残っています。その企業を買収した親会社がブランド名として残しているだけです。

つまり、部長が纏っていたおかしな雰囲気は、企業の死臭だったのです。

■障害者採用では

ここまで、空気感のおかしい社員がいる企業は遅かれ早かれ潰れる※という話をしてきました。では障害者採用ではどうでしょうか。

少なくとも私の体験では、障害者採用の面接で変な社員が出てきたことはありません。おそらく理由は2つです。

1つ目は、私がエージェント経由で一定の水準以上の企業を受けていたことです。

それに加えて2つ目は、障害者の採用というセンシティブかつリスキーな判断が必要な局面においては、どこの企業もそれなりの責任者を出してくるからです。つまり、テキトーな社員なんか危なくて絶対に出してこないということです。

ただし人事のカラーは企業によって千差万別でした。だから人事の纏っている雰囲気から社風を推し量ることができることに変わりはありませんでした。

※今回挙げた2社とも、潰れる直前の時期に金回りでやらかします。

1社は粉飾決算、もう1社も経理がずさんな実態が明らかになります。まともに帳簿をつけると、遅かれ早かれ潰れる企業であることが分かるので、会計まわりでテキトーな事を始めるのです。こういう所も共通です。

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浅見淳子

ブルーさん

待ってました! 最近お越しにならないので、そろそろメッセージを送ってみようかな、と思っていたところです。ありがとうございます!

私の好きなエピソードですが、ある人が合コンに行って、相手がM菱商事で、とても楽しい時間を過ごして、合コンの結果はともかく帰り道で株に買いを入れたということです。株主になるということはそういうすてきな人たちに働いてもらえるということなので、と。そういう合コンの使い方もあるんだな、と思いました。

また続きも楽しみにしていますね。

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シア

大学生の就活が始まっています。

仕事を探すときに誰かから紹介されてそうなったと言う人も結構多いんです。
周囲から「あなたにはこれがいいと思って」と言うふうに誘われることがあるので希望に沿わなくとも相手にお会いしてみるのもいいですね。

中国大陸では超氷河期のようです。
日本でも氷河期と言うのがあり自分自身そうだったようなのですが半数くらいはそうやってお誘いを受けて席に着くようになったお仕事だったんです。

あと最終的に腰を据えようとかそういうふうに思う仕事って横文字のナントカ…っていう長いものとかでなくて簡潔に「○○やってます!」と言えるようなわかりやすい仕事を続けていく人が多いですね。
社長も以前横文字長いよくわからない仕事は主婦の腰掛が多いと仰っていました。
わかりやすく「○○やってます!」と言う仕事だとなんとなく自分でも何をやればいいのかわかりやすくて内外ともにシンプルにやって行けるものなんだと思います。

就職するときにも仕事内容がわかりやすいって言うのは志望動機もイメージしやすいし社会に出てしばらくたっているなら新卒の時と違ってこの仕事をやって行こうと言うのが絵に描けるようになっているのではないでしょうか。

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