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就活のお部屋

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ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第45回
第1部体験編
第4章_エージェント
その6_エージェントP
(6)_模擬面接_③-1成人当事者の群像(1)_接客業Aさん

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-4/#comment-9954

マネージャーによるミニ授業の後、模擬面接に入りました。

しかし、この模擬面接は物凄く局面を絞って行われました。つまり面接の最重要局面だけに限定してロールプレイングを行うのです。

■特性と欲しい配慮

それは「特性と欲しい配慮」を面接官に伝える練習です。これは障害者採用における当事者の基本動作です。

ここで言う「特性」は、障害の内容です。自分はどういうことに苦手や困りごとを抱えているか。それを自己認識し、言語化できているのか。さらにその特性をカバーする自助手段や工夫を自分なりに持っているのか、といったところがポイントです。

「欲しい配慮」は、どのような職場のサポートがあれば(自分なりに)生産性が出せるかです。

こういったことを面接官に分かりやすく説明できるか否かを練習します。もちろんここまでの内容は、障害者雇用の書籍やYou tubeにおいて必ず解説されているはずです。

■Aさんの場合

まずはAさんの「特性と欲しい配慮」及びロールプレイング中の雰囲気を個人の機微情報をぼかしながらご紹介します。ただし特性と欲しい配慮については「ハッタツあるある」の内容を多く含むので、個人の特定はできないはずです。

そして特性と欲しい配慮こそが、障害者採用における最も重要な自己紹介となります。

<接客業Aさん>

AさんはASDで、現状は障害をクローズして接客業で働いておられるのだそうです。当時の私は、そもそもこの時点で本当に凄いと思いました。

特性、つまり困りごとは他の人の●●●を●●することだそうです。また、●●●●●●を苦手とするそうです。ハッタツあるあるです。

Aさんはこれらの困りごとに、自分なりの工夫や同僚の手助けを借りることなどで対応されていました。

そしてAさんは「職場の人たちに支えられています」とも仰っていました。

私はAさんの表情や雰囲気に好感を持ちました。確かに「当事者の顔つき」をしている印象でした。(※私は当事者を顔つきで判別できることがあります。個人的に「ハッタツの顔つき」というのがあると思っています)

しかしロールプレイング中のAさんからは、社会や健常者、あるいは自らの境遇に対する捻くれた恨みを感じませんでした。謙虚なお人柄で、人間の奥底から純粋さがにじみ出るような印象でした。

またマネージャーとのやりとりから、ある程度はきちんと職場で生産性を発揮できているご様子でした。またその生産性発揮を支えてくれる周りの方への感謝のお気持ちがありました。

「多分この人は、Pが求人票を用意したどこかの企業には受かるだろう」

私はそう思いました。

ただし、往々にしてAさんのような方はSNSに出てきません。SNSで恨み事を吐かないし、「ダイバーシティガー」とか言わないし、自分の障害をアイデンティティにもしないからです。

だから私が機微情報をぼかして書きました。こういう当事者が社会で日々きちんと働いていることを伝えるためです。私がこの連載で最も書きたかったことの一つです。そしてこういう人がエージェントを通じて転職していきます。

Aさんとマネージャーのロールプレイングが終わると、私と技術者BさんからもAさんにフィードバックを返し、それでAさんのターンは終了しました。

続いて、私のロールプレイングでした。
(続く)

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ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第44回
第1部体験編
第4章_エージェント
その6_エージェントP
(6)_模擬面接_②勤怠の安定

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-4/#comment-9935

マネージャーが入室した後、模擬面接会が始まりました。

模擬面接会は初めに、「障害者採用の基礎知識」から始まりました。これはミニ授業形式です。そして当事者達にはPがまとめた資料集が渡されました。

ここで状況を確認すると、関係者及び資料はすべて「精神障害者保険福祉手帳」が前提になっています。つまり

・マネージャー:特に精神障害/発達障害の人の支援が専門
・当事者:この日は3名。全員が発達障害の当事者であり、精神の手帳ホルダー

ですので、資料集も精神の手帳を持つ人に向けた編集になっていました。

■資料集

私の手元には今でもこの時の資料集があります。A4のカラー、両面コピーで綴じられた30ページ弱の資料集には

・(当時の)障害者人材市場の状況
・求められる人材要件
・必要な準備
・障害者採用の面接でのやりとりの基本

といったことがまとめられています。

当時の私は年単位の準備期間を経て、資料の内容は一通り把握かつ体得もしていました。だから新しい情報はほとんどありませんでした。資料の内容そのものは巷で発売されている障害者採用の本とおおむねよく似ていました。

しかし、秀逸なのはポイントの抑え方でした。必要にして充分で、かつ漏れなくノウハウが集約されていました。書籍に比べてはるかに少ないページ数ですが、この資料集があれば巷の書籍はいらないといえるほどの情報密度でした。

この資料集を基にして、マネージャーによるミニ授業が進んでいきました。ただ通常の授業と違うのは、講師が全身から闘気を放っていることです。

■勤怠の安定

ここで繰り返し確認ですが、障害者採用で大前提となるのは「勤怠の安定」です。

これは職場の人間関係や仕事のパフォーマンス以前に、きちんと毎日働けるということです。この勉強会はコロナ禍の前の時代の事でしたから、当時の社会情勢から言えばそれは「毎日遅刻しないで職場に来られること」を意味していました。

そして発達障害の人のうち、比較的働けるコンディションの人であればこれを達成できる人も多いようです。勤怠が安定した人材が多いことは、障害者採用における発達障害者の優位性です。

これは現代もそうで、Pのホームページにもはっきり記載されています。

■休むのは1.5日

勤怠の安定の解説が始まったところで、マネージャーは我々当事者を据わった眼で睥睨し、ドスの利いた、でも軽やかでよく通る声でこう言いました。

マネージャー:
「会社を休むのは・・・1.5日」(※当事者達に据わった眼でガンを飛ばす)

以下は意訳です。

(意訳)
「休みがちだと憎まれるぞ」
「反論したら殴るぞ」

もちろんマネージャーはここまで言葉には出していません。私の意訳です。

念のため書いておきますが、マネージャーは障害者雇用に関わる人ですから、毎日会社に行くのが厳しいコンディションの当事者がいることは深く理解しています。

だからこそ逆に凄んできたのです。障害に無理解なのではありません。マネージャーは分かったうえでこういう態度に出ています。

マネージャーは当事者にガンを飛ばした後、さらに投げかけをしました。

「皆さん、この勤怠の安定というのは、なぜだか分かりますか」

私はこの意図が分かっていたので、すぐに手を上げました。

マネージャー:
「はいブルーさん」

ブルー:
「現代の日本ではまだ在宅ワークは定着していません。勤務態度の基本は、毎日会社にいくことにならざるを得ないからです」(※これはコロナ前の時代です)

マネージャー:
「はい、その通りですね」

ミニ授業はさらに進んでいきました。

■勤怠の安定

エージェントPの資料によると、障害者の離職理由で最も多いことの一つは人間関係の不良だそうです。健常者と同じですね。

そしてこれに勤怠の安定が関わります。

はっきり言えば、会社を休みがちな人は往々にして憎まれてしまうのです。そういう事例を職場で見聞きしたことはないでしょうか。

当時の資料を見返すと、私の書き込んだこんなメモが残されています。つまりマネージャーが授業をした内容です。

<資料に書き込まれたメモ>

「勤怠不良が人間関係不良の引き金に」
「休むと目立つ」→「あの人には仕事を任せられない」
「特に職場に入って最初の段階で、仕事を連続して(2日)休まないこと」
「連続して休むと、信頼を失ってしまう」
「会社を休むのは1日、もしくは1.5日」
「初日は半休、2日目は休んで回復させる、3日目は来る!」
「2日休むと、また行きにくくなる、1日で回復させるすべを」

このように勤怠の安定は職場における信頼に関わり、就労の定着にも直結しています。障害者採用における前提かつ最重要事項です。

だからマネージャーはこの案内をするにあたりガンを飛ばして凄んできたし、授業でも入念に解説がなされました

(つづく)

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ブルー

コラム:障害者採用の現代史~身体の人と精神(&発達)の人

これはエージェントPが模擬面接会にあたり、当事者に渡していた資料に基づきます。

資料の中には、障害者採用における「精神の手帳を持つ人」と「身体の人を持つ人」の人数の年次推移のグラフがありました。

それは2010年代初頭から、障害者採用において精神の手帳を持つ人の採用数が身体のそれを上回った、というグラフがまとめられていました。データの出どころは厚生労働省の統計だそうです。

このコラムは、障害者の人材市場における身体障害の人と精神&発達障害の人の歴史です。

■身体の手帳を持つ人

まず身体の手帳を持つ人は

・配慮が目に見えて分かりやすい
・インフラが整えば、専門的な知識労働にも従事しやすい
・勤怠が安定している

という点で、給与が高くなります。障害者雇用の基礎知識です。よって身体の人は手帳区分が身体というだけでひっぱりだこです。障害者雇用を行う人事は本音では身体の人を欲しがっています。

実は障害者雇用における正社員の求人は、身体の人が前提です。人事はこれを表立って言えません。しかし障害者採用の常識となっています。この正社員案件に精神の手帳を持つ人が応募した場合、入社できたとしても契約社員スタートになるのが慣例です。

とはいえ身体の手帳を持つ人は

・高齢者が多い(身体の人の雇用が最も初期から進んだから)
・職場への定着率が高い

という2つの理由から人材市場になかなか出てきません。つまり身体の人だけでは法定雇用率を満たすのが難しいです。

■2010年代初頭からの歴史

私の記憶が確かならば、発達障害の人には2010年代初頭から精神の手帳が付与されることになりました。手帳は自治体ごとに発行されます。つまりその時代あたりから、発達の人にも精神の手帳を付与する自治体がちらほら出てきたということです。

それも追い風になったからか、Pの資料が示すように2010年代初頭には障害者雇用において精神の手帳を持つ人の年度別新規就労件数が身体の人を上回ったのだそうです。その傾向はその後毎年続き、かつ精神の手帳を持つ人の就労件数はますます多くなっていきました。

企業側の視点で言うと、障害者人材の中でも勤怠が安定している人が比較的多いという理由から、発達障害の人に注目が集まっていきました。

これは私にとって時代の追い風でした。

その後、現代において

「発達障害の人は他の障害種別の人に比べて、比較的勤怠が安定しやすい」

という事が障害者雇用の基礎知識になっています。

そういうわけで障害者人材マーケットにおける発達障害者の最大の付加価値は、「エジソンガ―」みたいな、特定の分野の秀でた能力ではありません。それ以前の「勤怠の安定」です。毎日会社に出勤できること、リモートワークなら毎日一定量の作業をこなせることです。

また本編でも述べたように、勤怠の安定は就労定着の大前提でもあります。マネージャーが当事者たちにガンを飛ばし、かつミニ授業で入念に解説した理由です。

だから浅見さんがずっと昔に自閉の人たちに対して、「この人達が週5日働けたら」と感じたことは、時代を超えて的のど真ん中を射抜いていたのです。

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浅見淳子

ブルーさん

赤本の出版動機の一つであった「週五日働ければなんとかなる」は正しかったですねえ。
でもエージェントが勤怠の安定を発達障害者の強みとしていることは知りませんでした。びっくりです。
当時から私は「エジソンやアインシュタインより週五日」と言っていましたが
それは福祉外の社会人として常識に身に着けた感覚だったのかもしれません。

それと、二日休んではいけない、よくわかります!
風邪で一日くらいはなんとか許されても、二日休むとそれは社会人失格、みたいな雰囲気ありましたね。私の場合には一日休んだだけで上司から電話かかってきましたが。「明日はくるんだろ?」みたいに。今ならパワハラですね(笑)。

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ブルー

浅見さん

>社会人として常識的に身に着けた感覚

→おっしゃる通り、もうこれです。

第二部の分析編でも扱いますが、障害者雇用で働く人の大多数は一般企業において健常者に紛れて働いています。

だから障害者人材マーケットも、実は健常者の社会人の常識がベースになっています。そもそも採用活動は健常者の人事がやりますしね。

当然エージェントはそれに合わせて仕事をします。

だからマネージャーは据わった眼で当事者たちにガンを飛ばした、という連鎖図式です。

今後ともよろしくお願いいたします。

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シア

会社には有給休暇と言うものもありますし出てきてほしい時に出てこないのは困るけどやることやってくれなければ出てきて来られた分の給与泥棒になってしまいます。
基本的な心構えとしては学校とはまたちょっと違うのかなと思います。
皆勤賞でなくても精勤賞くらいで構わないと思いますね。
また本当のところ毎日会社に出て早くなじんでほしいというのも人事としてはありますが障碍者雇用と言うのはぶっちゃけ時給換算ではあるので休んだ分給与出さないで済みます。
だから二人雇って1カウント(一人0.5カウント)とか法定雇用率もそういう働き方もあります。
実力や体力があるなら障碍者雇用じゃなくてかまわないわけですから。

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シア

ちょっと書きますね。
障碍者雇用で働きたい場合自分のどこに障害があり健常者とどこが違うのかとかきっちり説明できた人がそれで働くに値すると思います。

何が何だかわからないけど障碍者雇用…と言う人は自分の弱点を周囲の人がお世話することになってしまうでしょう。
それこそが知的障害や精神障害の「弱さ」でもあります。

この連載でもその弱さが描かれていない分余計に投げかけられてる感じもしてきます。
就活は一瞬ですが働き出したら年単位です。

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シア

すみません。
不適切な投稿だったと思います。
ここまで書いてきましたが。
しかし…「福祉や医療を利用してやろう」っていう人間の方にも問題があるだろうなと思いました。
ズルをしてもいいのだけど「私はズルをしました」「私は連中を利用してやりました」…手帳をいい会社に入りたいための目的で入手して返納した?っていう流れですよね。
よくよく考えたら腹が立ちますよ。
だったら強みとか弱みとか障碍者雇用での苦労とか書かなくていいのがわかりますよ。
そんなもので障害を名乗ってきたのなら私はそんなのは黙ってろよと思います。(怒

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浅見淳子

ブルーさんの場合には

障害があった。不適応を起こした。
→数年単位の就活(リサーチ期も含む)
→手帳をもって就活
→契約社員
→正社員
→手帳返上

という流れがあり、これは「適性のある仕事を続けると治る」という神田橋先生方面の仮説をそのまま体現したということだと思います。
「利用してやろう」じゃないですよ。

かつてのブルーさんがお父様にも苦言を呈される特性を持っていたことはブルーさんご自身が書かれています。
そこを自覚し、手帳ホルダーとして就活し、けれどもその手帳がなくなっても企業は雇い続けることを選んでいる、というところが大事です。
最初はお互いに障害者雇用を利用していたのだけど、それを乗り越えるだけの人材にブルーさんは育ち企業がそれを認めているわけです。

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シア

曲解していたのは確かで言葉遣いも悪かったのでこの場をお借りしてブルーさんにお詫びいたします。
外資系とか大手とか企業の民度とか一般的には大事に思うのかもしれません…それを手にするために何年もかかったのは社長の仰る通りなんでしょう。
そのために手帳を有効活用されていたと書いてありました。
何故そのお仕事でそのお仕事でのやりがいとか具体的なお話を聞きたいと思っていました…そうでなければ大企業に入ったら発達障害でもハッピーなはず!…そのような話が一般論になってしまうでしょうけど私はそうではなかったので。

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ブルー

シアさん

私とシアさんは年齢もほぼ同じで、かつ考え方も似た部分が多いように感じています。

それでですね・・。

>自分のどこに障害があり健常者とどこが違うのかとかきっちり説明できた人がそれで働くに値する

→これは次回やります。この説明を健常者に伝わるようにできているか、マネージャーと練習します。

>何故そのお仕事でそのお仕事でのやりがいとか具体的なお話

→ご要望にお応えできず申し訳ないのですが、これはあまりにも個人が特定されすぎるので、それほど書けないです。

つまり私が書くことを避けていたからこそ、逆にシアさんが気になったことも理解はできるのですが。

>大企業に入ったら発達障害でもハッピーなはず!…そのような話が一般論になってしまうでしょうけど私はそうではなかった

→企業はあくまで仕事をする環境にすぎませんね。確かに当事者にとって環境調整は死活問題ではあります。しかし当たり前のこととして、どんな仕事をするかということが基本だと思います。そこはシアさんに同意します。

この連載では「資質にあった仕事と環境」ということで、資質面からこの件を捉えています。

もしよろしかったら、今後もお読み頂けると幸いです。

この連載は当事者の神経を逆なでする要素に満ち満ちていますが、それでもシアさんは(当初はムカついたとしても)多分私の言いたいことが最終的には分かってくれる当事者の一人ではないかと信じます。

よろしくお願いいたします。

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ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第43回
第1部体験編
第4章_エージェント
その6_エージェントP
(5)_模擬面接_①マネージャー登場

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-4/#comment-9917

■守衛室前にて

その日は確か土曜日で、エージェントが入っているオフィスビルは正面玄関が閉まっていました。そこで守衛室のある裏口から入るのですが、何やら守衛室の前で戸惑っている男性を見つけました。

男性は何か守衛さんと会話をしているのですが、守衛さんと男性は話が噛み合っていないようでした。

私はそのやりとりをよそに、守衛室の前を通過して裏口から入ろうとしましたが、裏口もまた、施錠されていました。

ビルへの入り方が今一つ分かりにくかったので、私も守衛室まで行って、守衛さんに声を掛けました。

「〇階のエージェントPまで行きたいので、裏口を開けてくれないか」

すると守衛さんが「Pさんの許可がないと開錠できない」というような事を言ったので、仕方なくPの担当者に電話をして、指示を仰ぎました。

しばらくすると、オフィスビルの裏口が開錠されました。

また先ほど、守衛さんと噛み合わない会話をしていた男性もエージェントに用があるようでした。私はその男性に声をかけ、一緒にエージェントに行くことにしました。

そう、この男性も、模擬面接に参加する成人当事者でした。

■マネージャー登場

その日の模擬面接に参加する成人当事者は、私を含めて3名でした。模擬面接の開始時間になると、私たちのいる小さなミーティングルームに男性のマネージャーが入ってきました。

マネージャーが入室してきた時点で、部屋の雰囲気がガラリと変わりました。彼が全身からオーラというか闘気を発散していたからです。

マネージャーの体格は普通の人です。身長もむしろそれ程高くなかったように記憶しています。確か私より身長そのものは低かったはずです。

しかし全身から闘気を発散しているので、物理的体格よりはるかに大きく見えました。世代ではない人もおられるでしょうが、マンガ「北斗の拳」のケンシロウが本気を出したときの印象です。

ケンシロウは本気を出すと全身から青白い闘気を発散します。ご存知ない方は、「ケンシロウ 闘気」で画像検索なさってください。ケンシロウの身体の周囲が青白く光っているアニメの画像が出てくるはずです。

つまりマネージャーも似たような状態でした。

そしてマネージャーは部屋に入ってくるなり、当事者達の機先を制するように、よく通る「軽やかなのにドスの利いた」声でこう言いました。

マネージャー:
「ビルへの入り方は事前のご案内メールに記載されていますからね~」

はっきり言えば、それは自衛隊の教官が訓練生を恫喝するときの声色でした。

これは意図を意訳すると

『当事者といえども、我々エージェントPが用意しているような一定以上のレベルの企業を受験するのだから、事前情報はもっとよく調べる習慣をつけろ』

という意味です。あ、これは少し配慮した表現でしたね。マネージャーの声のトーンに込められた裏の意図をダイレクトに書きましょうか。

「つまんねえことで健常者の手を煩わすんじゃねぇよ、使えねえな」
「それで面接行ったって全部落ちるだろ」

繰り返しますが、マネージャーは直接こんなことは言っていません。

ただ、声のトーンが完全に「鬼教官の恫喝」でした。やはりマネージャーの発言は情報提供のためというよりは、新しい場所に行く際の事前準備の不足に対しての叱責の意図があったということです。

まあそれはそうでしょう。企業の採用面接に行くときに「面接会場の入り方」で先方にお手間をかけるようでは、先が思いやられます。

マネージャーはその闘気で当事者達を圧倒しつつ、模擬面接会が始まりました。
(つづく)

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ブルー

<人材市場サバイバル>

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-4/#comment-9909

◇次回以降の予告

次回以降は、Pの面接対策の章に入ります。
章タイトルは「模擬面接」です。

Pは一般枠において面接対策に定評があります。
よってそのノウハウを障害枠でも活かしています。

さらには自社の採用でも活かしているはずで、
だからこそPに勤務する人材は
人材業界においておそらくRをしのぎ
最優秀の水準を保っています。

模擬面接会はPの障害者採用のノウハウ・・・つまり

・自社がそもそも特例子会社なので、障害のある人を雇用している経験
・おもに大企業に対して、障がい者雇用のコンサルティングをした経験
・当事者に対して、採用選抜突破のためのアドバイスをした経験

がすべて凝集されています。
これを機微情報が漏洩しないように描写していきます。

また、Pの模擬面接は私以外にも
成人当事者が数名参加していました。

この人達が社会において健常者に混じって働き
人生をサバイバルして努力する姿は
この連載で私が最も書きたかったくだりです。

当時は模擬面接を
Pのマネージャーが担当していました。

このマネージャーはPのホームページによれば
現在でもPに勤務しています。
この人の素晴らしい優秀性も注目です。

では、次回以降よろしくお願い致します。

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ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第42回
第1部体験編
第4章_エージェント
その6_エージェントP
(4)_求人票_②質

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-4/#comment-9887

今回は求人票の質に関してです。Pの求人票群は、他と比べて質が違う印象でした。

■企業の格

まず企業の格が違いました。

ここでPの求人票における企業のレベル感をお伝えしたいので、いくつかの指標について現代の情報にアップデートしてお伝えします。つまり当時の求人票の企業に関して、現代の状況をもう一度検索してお伝えします。

———————————————

<売上高>
・現代においてもう一度検索すると、7社のうち6社が100億円を超えています。6社のうち3社は1,000億円を超えています。その3社のうち1社については5,000億円を超えています。

<従業員数>
・現代においてもう一度検索すると、7社のうち5社が1,000人を超えています。その5社のうち1社は10,000人を超えています。

<上場>
現代においてもう一度検索すると、7社のうち3社が東証プライム市場に上場しています。

<オープンワーク総合評点>
現代においてもう一度検索すると、7社のうち5社が3.0を超えています。その5社のうち1社については4.0を超えています。

<業種>
7枚の求人票の中には、ITもありました。金融もありました。メーカーもありました。メーカーの販社もありました。サービス系もありました。

————————————–

企業における障害者枠の有無に業種はあまり関係ありませんので、お気になさらないでください。企業の規模感や、オープンワークの総合評点にご注目ください。全体として、

・規模がそこそこ大きくて、質もそれなり

の企業が並んでいることが分かります。

そして一部に売上高や従業員数が特に大きかったり、オープンワークの評点が特に高い(=企業の質が高いと推測される)企業もあるという世界観です。

こういう感じの企業ラインナップになってくると、障害者に対する年収上限を「健常者としても御の字」のレベルで提示できる企業が出てきます。

■他のエージェントとの比較

求人票に関して、他のエージェントとPの比較です。

—————————————-

●Gは数をここまで持っていなかったです。

なお、私に勧めてくれた1社は超大手でした。現代において検索すると、

◇売上高は単独で5,000億円を超え、連結だと1兆円を超えています。
◇従業員数は単独で1,000名を超えています。
◇東証プライムに上場しています。
◇オープンワーク評点3.0以上です。

そして、障害者雇用に関して先進的な取り組みをしている企業でした。

ただしもう一度思い出すと、私は求人票を観ていませんでした。Gが「この企業に紹介できますよ」と言ってくれただけです。パイプがあるよと言ってくれたのですね。

●Kよりは企業の格や待遇が明確に上の企業群です。以前にもお伝えしたような気がしますが、当時のKは年収の絶対額よりも配慮を重視して求人票を集めていた印象があるからです。

他方、Pが提示してくる企業群になってくると、配慮を整えつつも生産性重視の世界観になります。つまり障害者採用であってもビジネスの論理で話が回っていますから、健常者における中途採用のような世界観により近くなります。

●Rも大企業にアプローチできますから、Pと求人票の世界観が似ています。

RとPは企業が一部被っていますが、Pの方が年収の上限が高いです。ただ下限は似ています。それでもPの方が全体的なレベルが高かったです。

———————————-

先ほどもお伝えしましたが、Pが保有する求人票はどのエージェントよりも年収の上限が高かったです。健常者でもこれだけ稼げたら御の字という水準です。

■外資との比較

なおここで外資との比較をしておきますが、Pの求人票における年収の最高額●●●万が、当時の外資系における障害者雇用の年収スタートラインでした。

つまり国内企業における障害者雇用の年収上限が、外資系企業における障害者雇用の年収下限です。

これはエージェントGで、実際に外資系に勤務する成人当事者が教えてくれたことは以前述べました。当時の障害者採用はそういう世界だったのです。

■国内系ではPの圧勝

このようにPが保有する企業の求人票は、年収の上限が健常者と比べてもひけをとらない案件が多かったです。つまりは経済的自立がだいぶ現実的になってくるラインです。これ以上の高収入を望む場合は外資系に行く必要があります。

このように国内企業の求人票に限れば質・量ともにPの圧勝という個人的印象を受けました。そして求人票のレベルが高いということは、当然ながら採用選抜の厳しさを意味しました。

以上はあくまでも当時の話です。

(つづく)

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yasu

最近、橘玲『シンプルで合理的な人生設計』という本を読みました。

橘氏は「経済的な自立」を重視している方ですが、この本では成功の法則を人的、経済的、社会的な資本の3つの軸から考察しています。事例として音楽家(バイオリン奏者)の話が出てくるんですが、職業的な成功(=世の中に認められ、それで安定した生計を立てることができる)はその分野で競争優位になれるためにどの程度のリソース投入が必要か、に大きく左右されることが、グラフも併用して解説されていて、なかなか面白いと思いました。発達系の人は割と芸術系を目指す人が多い印象ですけど、この分野はレッドオーシャンなのでリスクが非常に高い、というのは知っておく必要がありますね。

橘氏の論の進め方は、心理学や脳科学や社会科学の論文や本から論をもってきて、それを根拠にスパスパと切っていくスタイルのように思っています。断定的なモノの言い方も目立ちますけど、参考文献もきちんと示されており、本のつくりとしては良心的であると言えます。

返信する
浅見淳子

ブルーさん

いつもありがとうございます。前の記事にもコメントしようと思っていたのですがまずこちらから。なぜPがそれほど求人を持ってこられるのかと、なぜ外資はそれほど出せるのかが不思議です。

返信する
ブルー

浅見さん

そうですね、成人の発信を見ると、Pと「もうひとつのG」の二強で求人票を大方持っているような印象です。あくまでも印象ですが。

当時に話を戻せば、私はPしか使っていなかったのでPの独占に感じました。都市部で活動する成人当事者はそもそもこの図式に気が付いておきたいところです。そしてこれについては後半の「分析編」で扱います。

それと外資ですが、勤務したことがないので印象論を言うと、(皆様大好き)企業のダイバーシティの中に障がい者雇用がきちんと含まれているように感じます。

逆の表現をすると、国内企業ほど障害者雇用を障害者雇用「単独」で捉えていない印象です。だから年収も別世界なのでしょうが、そもそもダイバーシティの感覚がやっぱり内資とは別次元で、それを前提として障害者雇用が成立しているためではないかと感じます。

もっと掘り下げると、「個」に対する感覚が内資よりも明確にあるというか。そもそも個人という概念そのものが西洋由来ですよね確か? よく知りませんが。

だからその文脈で企業ダイバーシティの中に成人当事者がそのまま紛れ込んでいる感じなんですよね。そしてその紛れ込んでいる姿を「障がい者雇用」と後から称している感じです。だから障がい者雇用という印象が内資より薄い感じです。

もちろん人事は明確に物事を捉えていますから、例えば身体障害の人に対するサポート設備などの拡充など、つまり配慮(インフラ)は十二分に整えたうえでの話ですが。

私は外資に勤務したことがないのですが、このダイバーシティまわり、障害者雇用周りは明確に内資と外資で意識が違うんですよね。うまく言語化できないのですが、でもはっきりと感じます。それがはっきりと年収差にも表れているという感じでしょうか。よくわかりませんが。

今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
浅見淳子

ブルーさん

一つ質問です。
もちろんあくまでブルーさんの見立てということですが。
ブルーさんの連載を読んでいるとエージェントとは活用すれば役立つ機関だと思うのですが、エージェントにそもそも相手にされそうな人っていると思いますか?

返信する
ブルー

浅見さん

>エージェントにそもそも相手にされそうな人
>いると思いますか?

これの一番手っ取り早い確認方法は、エージェントのHPや、マッチングのサイトに行って「就活体験記」を読むことだと思います。

これは受験や資格試験の予備校における「合格体験記」に当たります。エージェントによってはこれがWeb上に掲載されています。そこに掲載されている当事者の人たちが「エージェントから相手にされていた」人々です。

他方、ご質問の背景にもあるように、エージェントから「ご紹介できる案件はありません」と言われた当事者の怨嗟の声もSNSには上がっています。

エージェントが人材市場をどのように観ているのかは明確な答えがありまして、これも第二部分析編で扱います。

よろしくお願い致します。

返信する
ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第41回
第1部体験編
第4章_エージェント
その6_エージェントP
(4)_求人票_①量

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-4/#comment-9851

今回からはPが保有していた求人票の量に関して取り上げます。

■サイトにおける求人数

そもそも、Pは大手なので大量の求人票を持っています。Pが主催する求人サイトで検索すると、少なくともPは2000件程度の求人票を保有していることが分かります。この2000件には非公開求人も含まれます。

もちろん、一人の求職者に対して2000件の求人が全部マッチングするわけはありません。そこでこのような大手エージェントの場合は、カウンセリング担当が求職者に求人票を何通か見繕って持参してきます。

もちろん、求職者側からエージェントのデータベースにアクセスして、自分で選んだ企業に応募することも可能です。

ただ私とPの関係性に限れば、カウンセリング担当が見繕ってもってきた求人票の方がマッチング確度は高いのかもしれないと思っていました。あれだけ緻密な初回ヒアリングをした後だったからです。

■見繕われた求人票

当時の記録を見返すと、この時のPのカウンセリング担当が持ってきた求人票は7通ありました。内訳は

・正社員案件が1件
・契約社員案件が6件(正社員登用制度がある企業を含む)

です。

まずそもそも、7通も求人票を応募者に見繕って持ってくるだけ大したものだと思いました。確かに障害者雇用の求人は世の中に多くあるのですが、面談をした求職者に合いそうな求人案件を「見繕う」となると数が限られます。

例えば前述したヘッドハンターも障害者採用の求人票を持ってきたことがあります。その時は1通でした。また、別件で某企業の社長と面談をさせて頂いたこともあるので、ヘッドハンターから見繕ってもらった求人票は事実上2通です。

他のエージェントが見繕って持ってきた求人票に関しては、当事者創業によるエージェントGで1通でした。RはPとかぶっている求人票もありましたので、R独自の求人票となると2通でした。

このように求人票を集める力は、営業力のある大手の方がどうしても有利になります。

ただ求人票の量だけなら、障害者雇用の求職サイトにも募集案件はあるし、ハローワークにも障害者対象の求人票は多数あります。また、エージェントKでもそれなりに求人票を持っていました。もちろんRはいわずもがなです。

しかし私がこのエージェントPの力をつくづく思い知ったのは、保有している求人票の量もそうなのですが、質の問題でした。

(つづく)

返信する
ブルー

浅見さん

改めて返信です。

>本当に支援者はいくらでもプライドをはぎとろうとしますね。
>ブルーさんはそれに負けなかったのか。あるいはそういう場を選ばなかったのか

⇒私は後者で、そういう場を選びませんでした。この連載の最初のころ、前提編のその4「福祉系の回避」がそれです。

https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-1/#comment-9056

また、

>ブルーさんが最初に決めた条件に忠実だったことが印象的
>企業規模や年収、正社員の実績など譲らなかったところ
>きちんと自分の望みを把握していた。そこを譲らなった。

まず、私以外の人の話と比較してみます。

■友人のエンジニアとの比較

先日、私の友人のエンジニアが転職をしました。彼もまた最初に決めた条件に忠実でした。でもそれはエンジニアだからです。「保有するスキルが使える場所」というのが絶対条件で、スキルが要因です。

でも私はエンジニアではありません。特に私が活動したのは障がい者採用のフィールドですので、職種はオープンポジションのものが多かったです。だからスキルが要因でもありません。

つまり彼と私のプロセスと結果は似ているのですが、それらをもたらした要因が多分違います。

当初はアスペのこだわりと頑固さが功を奏したかなとも思いました。ただ、頑固なだけでは結果は出ません。結果を出すことに関してこの連載では「事前準備」「基礎の完成度」を強調してきました。

このように自分が方針を変えなかった理由や、変えないまま結果が出た理由について、友人との比較やアスペの特性も含めていろいろ考えました。

そして、つまるところ

・私の強みが効いた

からだと思います。以下になぜ強みだと思うに至ったかの経緯を述べます。

■場の選択

まず場の選択です。

ここの返信の冒頭に「私はそういう場を選ばなかった」ということをお伝えしました。浅見さんが抱えておられる方の事例と私や友人の転職を比較した場合、やはり福祉系を回避して民間企業のフィールドで活動したことが決定的に重要な前提だったと思います。

強み(凸)は猛烈に結果を出す力ですが、それでも人間の力です。神通力ではありません。強みが活きるためには、その強みを認める人がいる場に身を置かなくてはいけません。

その人の強みを認めない場では、強みは活きません。強みは一般的基準を逸脱した特殊な力なので、認めない人にとっては奇異に映り、この上なく嫌なものでもあります。

自分の強みが活きる場なのか否かの判別は、頭で考えたり、経験をもとにして行うこともあります。

ただし稀に、自分が活きる場を選べることが強みの人もいます。例えば花風社の関係でいうと、「発達障害、治った自慢大会!」の第2部に登場した娘さんが持つ力です。

娘さんは自分に合うものを的確に判別できますが、あれは私の定義では「強み」です。特に自分が活きる場がわかるというのが最も重要なことだと考えています。

ただしこのサイトの書評コーナーでは混乱をさけるため「天与の能力」という表現とさせていただいています。

■努力感なく意識もなく、結果が出たことにも気がつかない

さらに、無意識的にすべてが行われていることです。

私は方針を変えないことに関して努力感を持っていませんでした。また当初の方針通りに結果が出ていたことは、浅見さんに指摘されて初めて気が付きました。

方針は意識していましたが、「変えない」ことに関して無意識だったのです。この無意識に努力感なく結果が出ている感じは、私から言わせると強みが奥にある可能性が極めて高いです。

通常、人は

・必死に意識して方針を守り、
・それでも往々にして方針が変わり、
・努力感いっぱいで行動し、
・しかも結果が出ない

のがデフォルトだからです。対して

・無意識に方針を守り抜き、
・そのまま結果が出て、
・しかもそれを忘れている

のは異常事態です。スムース極まりありません。結果を出すにあたりフリクション・ロス(内部抵抗)が全くない。その奥にこそ強みがあります。

もし強みだとすると、それは資質に根ざした特殊武器(=凸)ですので、他人に説明できません。本人的にはフツーにやっているだけだからです。

強みが出す結果は、無意識かつ全自動です。本人が忘れていても、本人の当初の目標通りになっています。これは後から結果を検証するとわかります。

すなわち結果に対して強みが寄与する割合は、必ず本人の意志や希望、あるいは努力感よりも優越します。必要なのは場の選択だけです。ここは世間の人がなかなか心情的に受け入れがたいところかと予想します。

■生き方の強み(というか資質)

>機会があれば、ブルーさんのプライドの秘訣を知りたい

以上を検討しますと、この件はプライドよりも強みが効いた話だと思います。

これはいわば「生き方の強み」といえると考えます。資質といってもいいかもしれません。結果として職業選択にも効いてきます。この「生き方の強み」は誰にでも必ずあるはずで、私の場合はこういう作用を持っているということだと思います。

花風社の本だと、「10年目の自閉っ子、こういう風にできてます!」のP.314に近い内容です。あのページをもじれば

ブルー:
・「転機」の乗り越え方⇒目標を曲げずに真っすぐ進む
・そして順調な時は・・・⇒「マイペース」

です。

よろしくお願いいたします。

返信する
ブルー

(独り言~強みと資質~)

一般的に言われる強みは職業上のものである。職業上の強みは最も具体的で、いわば道具のように限定されたものである。世の中で「あなたの強みを見つけよう」と言われているものの大半はこれである。

職業上の強みを活かすことも短期的、実務的には重要だと思われる。しかしそれ以前にもっと深い領域にあるもの、例えばここで挙げた生き方の強みのような、もはや資質と言っていいもの、そういうものを活かしていくことの方がおそらく優先順位が高い。

そして世の中でこの資質領域に眼をつけている人も最近は増えてきた。今は時代の変わり目で、より土台の力が必要な時期だからだ。

ひょっとするとこの先訪れる大きな歴史のシフト(A.D.2025~?)においては、むしろ土台の力以外は使えないかもしれない。だとするとこの領域の重要性はこれからさらに高まることになる。

そして発達援助はこの領域にも大変いい影響を与える。その人が必ず持つ、生き方の強みが発動しやすくなる。

他にも強みにはいろいろな種類がある。私のメンターだった起業家「海老蔵信長さん」と一緒にいた時代も、強みのレンジをあえて広くとっていた。研究対象を職業上の強みに限定しなかった。彼とはいろいろな強みを一緒に研究したものだ。

いずれにせよ、究極的には強みを含めた資質を活かすことが基本だ。強みは資質の一部分にすぎないからだ。資質がその人の生得的な持ち物の全体、強みはあくまでその一部分である。

資質の話は体験編でこの先、もう一度出てくる。その時にもこのようにまた何かを書くかもしれない。

返信する
ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第40回
第1部体験編
第4章_エージェント
その6_エージェントP
(3)_応募条件

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-4/#comment-9826

これから当時のPが保有していた求人票の話をしたいのですが、その前に一つ話題を挟みます。それは当時の私自身の応募条件です。この条件を基準に私は求人票を観ていました。数字に関するところは一部黒塗りで失礼いたします。

■従業員が●●●●人以上の企業であること

私はそれまでずっと中小企業勤めだったし、顧客も中小企業が多かったです。だから、もう中小企業の世界は卒業したいと思っていました。

この活動においては、大手企業もしくは大手の子会社を優先して応募したいと思っていました。そういう企業の方が待遇も安定しているし、制度もきちんとしているかなとイメージだけで思っていました。

実際にどうなのかは、選抜を受ける段階になったらよく観ようと思っていました。ただ、結局入社したのはやっぱり中小企業でした(爆)。ただし、顧客はほとんど大手企業でした。かつto Cの仕事もしています。

その後も幸いにして勤務先は事業成長を続け、そろそろ社員数が●●●●人に迫ってきました。

なお、この活動において大手企業を受験した顛末は後ほど。

■年収のボーダーライン

活動においては年収のボーダーラインを決めていました。●●●万以上です。エージェントPのカウンセリング担当曰く、障害者雇用においては非現実的ではないにせよ「けっこういい水準」なのだそうです。

転職活動の結果、この目標水準を超える金額で入社しました。

■正社員登用の「実績」の有無(※「制度あり」だけでよしとしない)

障害者採用の世界というのは、現実として最初から正社員で入社できるのは身体障害の人くらいです。精神や知的の手帳を持つ人々は、契約社員でスタートするのが慣例です。

ですので私は、正社員登用制度があるか否かをチェック項目としていました。

ただし、本質的に重要なのは制度の有無ではありません。制度があっても有名無実化しているかも知れません。

重要なのは実績の有無です。契約社員で入社した障害者の人が、正社員になった実績があるか否かが大事だと思っていました。

ただ、当時ほとんどの求人票は「制度あり」にとどまっていたように思います。「正社員登用実績あり」という求人票は見たことがありませんでした。

■現実:私の入社後

私は今の勤務先に初めての発達障害の人として入社しました。最初は慣例通り契約社員からでした。

正社員登用制度そのものは、契約社員から入った人のキャリアラインとして整備されていました。それが障害者雇用の開始に伴い、障害者の人にも正社員化の道が整備されました。私はそこに乗りました。

当時の勤務先で、障害者の人が正社員化した事例は聴いたことがなかったです。というより、そもそも障害者雇用の立ち上げ期に私は入社したのです。

思い返せば、私は入社後数年に渡って

「後に続く人々のために、この会社において発達障害の当事者が正社員化する最初の実績を自分が創らなくてはならない」

という意識を持っていました。微力ですが、勤務先のダイバーシティ&インクルージョンの礎の一つをつくることができればと思っていました。

実際に私が正社員化したのは、入社して数年後でした。そのかかった時間も世間の慣例通りでした。そして今では私の後にも凸凹の仲間が入社していて、現場で活躍しています。

そしてそのさらに数年後、私は手帳を返納して一般枠に移行しました。

(つづく)

返信する
浅見淳子

ブルーさん

ありがとうございます。
ブルーさんが最初に決めた条件に忠実だったことが印象的です。
私自身は正社員二社やりましたが、最初は言われた条件をそんなもんかなと思って入りました。そして次は交渉して入りました。どっちも中小というか零細です。出版界ですから。ギョーカイ全体で二兆切っているギョーカイですからね。ただ商業的な規模の割にプレゼンスが大きいギョーカイですが。

大学生の時、開業医の娘が同級生にいました。
当然ですが贅沢な暮らしをしていました。
彼女曰く「医者は家族がやればよい」とのこと。
なんだかんだ汚れ仕事でリスクも気苦労も多い。本人は高収入だけど大変だ。でも家族は大変じゃなくて実りだけ味わえるからお得、というのです。
なるほど~と思いました。

うちはいわゆる旧財閥系の大企業勤めでした。
今母の安定した老後を見ると、たしかにお得な選択だったと思います。そして母が安定していると私たち世代も仕送り等の必要がないので、企業規模が大きいところに勤めると二世代にわたって得をするわけです。

けれども上場企業が数百社あるらしいわが地元のマスク民の皆様をみると、自分は大企業勤めではなくてよかったと思っています。
一緒に働く人数が多くてステークホルダーが多いと大変そうです。
大企業勤めも家族がやるものなのかもしれません。
私は実家が大企業で得をして、今零細で得をしています。とくにコロナ禍、この自由は代えがたいものでした。
大企業社畜の皆様のおこぼれとして、地元で売っているランチ弁当のクオリティとバラエティを享受させてもらっています。

それにしてもブルーさんはいい意味でプライドが高いと思います。
このプライドが保てないと
就労B→就労A→障害者枠
みたいな福祉が設定したファンタジーに乗ってしまうのですが
企業規模や年収、正社員の実績など譲らなかったところがすごいですね。
機会があれば、ブルーさんのプライドの秘訣を知りたいです。

返信する
ブルー

浅見さん

結論から書きますと、この件はプライドというより
「強み」の話であることが判明しました。

浅見さんへの返信を書いていたら
「強み理論」の原稿になりましたので、
後ほど、少し整理してリクツの原稿を出します。

まずは取り急ぎ返信まで。

よろしくお願いいたします。

返信する
ブルー

浅見さん

お忙しいところありがとうございます。

>他人のカルチャーフィットをする

Pによる求職者の全人的な把握は、おそらく履歴書に添付するエージェントの推薦状(というのがあるのです)を書くときや、求職者に求人票を見繕って持ってくるときなどに功を奏している気がします。あくまでもこれは推測ですが。

これは求職者に対してエージェントが的確なことをするためというよりは、ズレたことをしないためというのが実務上の現実になっているような気がします。

企業と求職者のカルチャーが合致しているか否かを判定できるのは企業側だけです。これは求職者もある程度感じるのですが、やっぱり正確に分かるのは採用する側だけです。

それでもエージェントが求職者自身のカルチャー(価値観やキャラクター他)をしっかり把握しておくことにデメリットがあるはずもありません。

それと今の時点でもう一度振り返れば、緻密な初回ヒアリングはそもそもP自身が求職者をうまく扱う為でもあったと思います。つまり求職者とPとのコミュニケーションを円滑にするためです。当たり前の話ですが。

>エージェントのプロのお仕事を知るのが楽しみ

→はい、Pの仕事ぶりの優秀性は凄まじかったです。

中の人たちも優秀だし、組織的なオペレーションも細密にできていました。障がい者エージェント二強の一角ではあるのですが、個人的にはここが最強ではないかなあと思っています。まさに東の正横綱ですね。

今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第39回
第1部体験編
第4章_エージェント
その6_エージェントP
(2)_初回登録

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-4/#comment-9817

今回は初回登録の話です。

この連載では、いくつかのエージェントの初回登録の様子を描写してきました。創業社長が自ら求職者のアセスメントをするところや、合同登録会形式のところもありました。

Pはどうだったでしょうか。

■担当からの電話

インターネット経由でこのエージェントに利用申し込みをして数日後、担当の方から電話がありました。

担当というのは、エージェントにおけるカウンセリング機能の担当です。Pの場合、私が転職活動をしている限り一貫して私を担当します。

電話越しに担当者は言いました。

担当者:
「ブルーさんを担当させて頂く担当のXです。宜しくお願い致します」

ブルー:
「宜しくお願い致します」

担当者Xさん:
「早速なのですが、直接弊社までお越しいただき、お話を伺いたいと思います」

ブルー:
「ハイ、宜しくお願い致します」

担当者Xさん:
「初回登録の面談ですが、2時間を予定しております」

ブルー:
「2時間!? そんなやるんですか?」

担当者Xさん:
「はい、それだけ時間をかけます」

今でも覚えていますが、この時の担当者は確信に満ちた口調でした。なんだか凄いなと思いました。

例えばKの場合、創業者による初回登録面談の所用時間は30分~1時間程度だったと記憶しています。Rの場合は、合同形式で20分~30分程度でしょうか。

ところがPはマンツーマンでみっちり2時間です。当初は何をそんなにたくさん聴くのやらと思っていました。

■Pの初回登録面談

結局、初回登録ヒアリングは予告通りみっちり2時間行いました。あれから数年経過するので、何をしゃべったのかもう詳細は覚えていません。

ただ覚えているのは、生い立ちから特性から、診断に至る経緯、そして職業人生に関してと、人生と人間を丸ごとヒアリングされたことです。情報量としては、Pが求職者の「自伝の要約」が書けるレベルです。自伝「本」まではいかないでしょうが、自伝「小冊子」は確実に作れます。

今思えば、ここまで細密に人間全体をヒアリングしないと個別化ができないし、きめの細かいフォローもできないからだということが分かります。

また企業と求職者のマッチングは能力だけの問題ではなく、その人が身にまとっているカルチャーまで含めてマッチングしないと受かりません。能力も重要ですがカルチャーフィットの方が優先順位がより高いです。

ですのでエージェント側も、当事者を緻密に分かっていないと適切なサポートができないはずです。だからこれだけ緻密にヒアリングをかけたのです。

実際、担当者Xさんは私が今の企業に内定するまで実に細やかにフォローしてくださいました。

さらにこれは求職者がエージェントに対して信頼感を醸成するのにも役に立ちます。これだけ緻密に求職者のことを理解しようとしてくれるエージェントは当時Pだけでした。これは大変に頼もしいもので、求職者は当然ながらPを最も信頼して利用するということになります。

そしてこの時点で、Pは競合のエージェントを蹴散らしてもいます。求職者はP以外に仕事を頼む気がなくなってしまうからです。

このように私は、初回登録の段階ですでに「Pは他と格が違う」と感じていました。そしてそれは初回登録だけではなく他の全てのサービスや、そもそもPの社員達にも言えることでした。

今回は以上です。次回以降は求人票に関してです。

返信する
ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第38回
第1部体験編
第4章_エージェント
その6_エージェントP
(1)_Pの特徴

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-4/#comment-9801

今回から最強の障害者エージェント、Pの利用体験談に入ります。

まずは例によって「人材業界 ランキング」で検索をしてみてください。トップに君臨する企業が圧倒的ですが、2位の企業グループがあります。その2位の企業グループに属するエージェントが、今回からの舞台「エージェントP」です。

私は最終的にエージェントPを経由して転職しました。よってエピソードのボリュームはPの話が最大の量となります。

■Pへの評価

以前、私はキャリア系のサイトで、この業界2位のPホールディングスに属するエージェント(一般枠を扱う企業)が以下のように評価されているのを見かけたことがあります。

―――――――――――――――

●人材系はトップのRが有名だが、勤務している人材のレベルはPが最優秀と考える。

●Pは3位以下の企業に比べ営業力の桁が違う。小規模なエージェントは量で負ける。

●Pの面接対策は評判が良い。

――――――――――――――――

Pを利用した実感ですが、これらの評価は障害者枠を扱う企業(=今回の「エージェントP」)にもそのまま当てはまっていました。

確かに勤務している人材の質と面接対策の緻密さは他の追随を許さないものでした。営業力、つまり障害者採用の求人票をかき集めてくる力も強かったです。

Pは健常者を扱うときの強みを、障害者採用のフィールドでもそのまま活かしていました。

■特例子会社である

エージェントPには大きな特徴があって、それはこの企業自体がPホールディングスの特例子会社だということです。ですので、エージェントPそのものに障害者の人達が多数勤務しています。

それは障害を持つ求職者への面接対策や、障碍者雇用を始めようとする企業へのコンサルティングに実地の経験として生きるわけです。

■Rとの比較(印象論)

個人の感想ですが、PはRに比べて全体的に精練された印象です。ガタイはRより小さいが、密度と質はPの方が高い感じです。

人材業界において、Pはいわば「次男坊」として絶対エース「Rアニキ」の背中に学んだと推測します。

そして、P次男坊はいつしか企業としての完成度でRアニキを超えたような気がしています。これは厳密な企業分析の結果ではなく、あくまでも個人的な印象にすぎませんが。

今回は以上です。次回は初回登録面談のエピソードです。

返信する
浅見淳子

ブルーさん

いつもありがとうございます。
しばらく新刊作業もあり、管理人メッセージの方に色々感想をあげさせていただいておりました。
直販、取次、ときて今Amazonに第二次在庫を入れてきたところなので(っていっても私の作業は指先だけですが。これから倉庫の人たちが実作業をやってくれる)
ちょっと落ち着いてコメントさせていただきます。

カルチャーフィットの大切さ、というのがよみがえりました。
私の場合、正社員で二社で働きましたが、一社目はカルチャーフィットが合わず、二社目はある意味「合いすぎ」ました。
そこも辞めることになったのですが、だからこそ自分の生きる場所を慎重に選んできました。

いや、働くようになる前からカルチャーフィットの問題には敏感だったかもしれません。
なんとなく、生まれた場所が場違いなような気はありました。
一方で年をとってみると「そこがあっての自分なのだ」というところもあり、一言では言えないのですが。

ともかく自分にフィットするカルチャーを必死に探す・作るしてきた私ですので、他人のカルチャーフィットをするなんて、それだけでもエージェントの営業の人たちがプロフェッショナルだなあと思いました。
私もたまたまアレンジした組み合わせが奏功したことはありますが(赤本とか)それは偶然の賜物にすぎません。

エージェントのプロのお仕事を知るのが楽しみです。

返信する
ブルー

<人材市場サバイバル 次回以降の予告>

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-4/#comment-9794

●予告編

「Pは?」
「私はPを使ったんだけど」

クラスタ内の成人当事者の方、お待たせいたしました。
いよいよ次回からエージェントPが登場です。

なお、人材業界の大手にはPがもう一社あります。
これから扱うのは業界第2位のPです。

ネットにおける成人当事者たちの発信を眺めますと、
都市部の障害者エージェントの世界は
おそらくPと「もう一社のG」で2強を形成しているらしいです。

わざわざ「もう一社のG」と書いたのは
この連載で登場したエージェントGとは違う会社だからです。

ただし私は二強のうち「もう一社のG」の使用経験がありません。
事実上、私は業界第2位のPだけで事足りてしまいました。

そしてPの強力かつ緻密なサポートがなかったら
今の勤務先には入れなかったです。

ここから推測するに
都市部にいる発達障害の成人当事者は
障害者枠の就職活動をする際には
まず二強のエージェントに網を張った方が良さそうです。

ただし準備が不足していたり、コンディションが良くないと
「人材市場に塩漬け」にされます。
塩漬けにされている当事者の怨嗟の声も、ネットでは時折見かけます。

それはエージェントのせいというよりは、
人材市場の性質のためです。

それと先ほども述べましたが二強のうち
どちらか1つでも充分なような気もします。
私もそうでしたし。

例えば二強のうち、
Pを使いこなせるところまで自分を整えたとすると
多分どこかの職場には必ず決まると思います。

そして次回から
Pだけでおそらく連載が数ヶ月は続きます。

Pのオペレーションが
エージェントの中でも群を抜いて緻密だったため、
体験記のボリュームが増してしまったのです。

Pの話は企業面接の話と並び
第1部体験編のメインコンテンツです。

「そうこなくちゃ、私もPを使ったけどレベチだったもの」

はい、確かに。
個人的に、最強の障害者エージェントはPだと思っています。

そういえばこの話はハッタツBarでもしたのですよ。
私がいたテーブルに、
もうお一人、Pの利用経験者がおられまして。

「エージェントの中でPだけレベチ」という点で
当事者同士、意見が一致したことを今でも覚えています。

ただしこれは、成人当事者の中でも知っている人と知らない人がいます。
実際にエージェントを複数利用して、比較しないと分からないからです。

ですので、このサイトに書き残すというわけです。
それでは次回以降、宜しくお願い致します。

返信する
ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第37回
第1部体験編
第4章_エージェント_その5_エージェントR
(3)_Rの求人票_②_特例子会社

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-4/#comment-9758

今回はRに提示された求人票の2通目です。Rからの求人票の紹介はこれで最後です。

私はこの企業に応募しませんでした。年収額が私の個人的基準に達しなかったからです。

しかしなぜこの求人票を取り上げるかというと、募集意図が先進的だからです。当時も先進的でしたが、今でも先進的です。つまり障害者採用の未来課題です。

——————————————————————————

<求人票>

某・大手情報系企業の特例子会社

設立 20●●年●月(設立●年目)
社員数:●●名

募集形態:正社員
業務内容:親会社からの受託(定型的事務業務)

業務内容の例)※当時

・営業サポート事務(営業担当変更時の営業Mapのメンテ等)
・アンケート結果(=紙)のデータベース入力業務
・Webによるデータ集計 

など

勤務時間:9:●●~17:●●(休憩1h)
土日祝 休み
交通費支給

給与:月額●●万円×12か月
賞与:月収の●ヵ月分/年
年収合計額:●●●万円 程度

アクセス:●●駅から歩いて●分

■Rの担当者よりコメント

社員は、3●歳くらいまでの若い方が多いです。特例子会社として設立されて●ヵ月で、規模も大きくなりつつあります。現在は●●名ですが、毎月数名ずつ社員が増えています。

今後、リーダーをやりたい人を中心として募集しています。

■当時の私の判断

当時この求人票の提示していた年収額は、経済的自立にギリギリ手が届くか届かないかというラインでした。当時の私は希望の年収額の目安を持っていました。この求人票の提示する年収額はそれに届かなかったので、応募を見送りました。

私は、次なる職場として特例子会社を視野に入れたこともあります。それまでの人生において自分が身を置いてきた環境、すなわち学校やアルバイト先、そしていくつかの会社のことを振り返った時、ひょっとすると自分は特例子会社で働いた方がいいのかも知れないと思ったのです。

働くとなったら、障害者に対して最適設計された環境の方が自分は他人に迷惑をかけないし、自分もつらくないのではないかと考えたのでした。

しかし特例子会社限定とか、特例子会社第一志望とか、そういう活動の仕方はしませんでした。特例子会社については、狙い撃ちもしないし、否定もしないで活動をすることとしました。

そしていろいろと縁があって今の勤務先に入り、結果として一般枠の人々に紛れて働くようになったのでした。

■この求人票の最大特徴

一見するとこの求人票の最大特徴は「正社員」であることのように見えます。でもそれは2番目の特徴です。最大の特徴は求人票に記載されている条件ではありません。募集意図です。Rの担当者の以下のコメントです。

「特例子会社として設立されて●ヵ月で、規模も大きくなりつつあります」
「今後、リーダーをやりたい人を募集しています」

つまりこれは、スタートアップの特例子会社で

★将来のリーダー候補、及び管理職候補の障害者

が主な狙いである求人票です。もちろんメンバーとしても入社できます。

■障害者雇用の未来課題

障害者のキャリアに関して、当事者がリーダーや管理職をつとめる、つまり部下やメンバーを持つ職制になれるか否か、あるいは採用側がそういう障害者を採れるか否かという論点は、私が活動をしていたころに「今後の課題」としてちらほら言われ始めたような記憶があります。

この件は今でも言われています。例えば書籍やSNS、あるいはyou tubeや各種のHPで話題になっているところを見聞きなさった方もおられるのではないでしょうか。

そういえば私が当時お世話になったヘッドハンターも、著書の中でこの件に言及していたように記憶しています。また、障害者雇用を担当している人事さんがSNSにおいて、匿名でいろいろと語っておられるのを見かけることもあります。

障害者のキャリアにおいて「リーダー/マネジメント職、管理職」をやれるか否かは、未来課題として常に関係者の頭の中にある様子です。

■この企業の現在

この企業の採用HPを開いて「働く仲間」のページに行くと、メンバー職の当事者に混じって、リーダー職を担う障害者社員の方が紹介されていました。その方のインタビューを拝読すると、マネジメント能力の向上に意欲を持たれておられました。

またこの企業において、社員における手帳の種別で最も多いのは精神でした。次が身体の人でした。知的の人はほんのわずかでした。精神の人が最も多いというのは時代の傾向通りです。

そして社員は20代と30代の人が大半でした。私に求人票が回ってきた当時も「3●歳くらいまでの若い人が多い」とRの担当が語っていたので、この年齢構成比率は意図して行われているのかも知れません。いや、まったく私の推測ですが。

この企業のHPを見る限り、この企業は特例子会社としてはそれなりに目的を達成している部類ではないかと思います。ただし直接訪問したわけでもないし、社員の方とお話をさせて頂いたわけでもないです。あくまで表面ツラを眺めただけの印象論にすぎません。

■この企業を支える要因

この企業のHPには募集要項もあって、もちろん給与金額も提示されていました。確かに障害者雇用ですから、一般枠に比べれば給与は高くないです。

しかし私が活動していた当時よりも、求人票に提示されている基本給が●万円上がっています。これは素直に称賛したいです。中で働く障害者の人達が、数年に渡りきちんと生産性を出し続けていたことを示唆するからです。

この企業を先ほどオープンワークで検索したら、総合評点3.0を超えていました。個人の偏見ですが、それなりに頑丈な会社だと推測します。それは大企業の子会社として、仕事の受注基盤がしっかりしていることも一因でしょう。

しかし根本的にこの企業の支えになっているのは、中で働く障害者の人達が日々きちんと仕事をしていることだと思います。

エージェントRの体験記は以上です。次回からまた別のエージェントが登場します。

返信する
浅見淳子

ブルーさん

いつもありがとうございます。

昨日の朝この記事を読んだとき、「発達とベンチャー」という視点を与えられた気がしました。どっちかというと「先着一名様」の影響もあり、発達の人の仕事観ってザ昭和な気がします。資格へのこだわりもそうですし。

まずブルーさんがこの記事で言及しているベンチャーは、生き残って成長しているベンチャーですね。そうじゃないベンチャーもたくさんあったので、そして潰れる時はとてもあっという間だしその際の人材放出とかも激しいので、そっち側のベンチャーに縁づいてしまうと、レジリエンスの乏しい人にはきついかもしれません。

一方で私が垣間見た(ITとは限らなくても)ベンチャーのノリを思うと、あのノリについていける人といない人がいるんだろうなあと思います。おしゃれなカフェテリアとか、自由さとか、若さとか、色々ベンチャーのノリを象徴するものはあり、中で働いている人はわりと卒がない感じ、動画を1.5倍速で見るイメージですが(勝手な憶測です)、もしかしたらベンチャーのベンチャーらしさを決定づけているのは

IPO+ストックオプション

への夢を共有しているというか、そういうものを目当てにできるメンタリティかもしれません。当たるとでかい、みたいな。

これが発達の人に向いているかどうかはわかりませんね。まあでかく当てれば向いているも何もなくハッピーだとは思うのですが。

ちょうど飯テロのお部屋でyasuさんが高度なSSTをしていらっしゃったのですが

この「ノリ」についていけるかどうかも社会人にとっては大事なのだけれど

そうするとまた真面目な親御さんや、マニュアル頭の人が「ノリについていく」みたいなことを強迫的に捉えそうですが

ある程度社会人になったら選べるので、どういうノリならついていけるかも大事な視点だと思いました。

私は過去に垣間見た組織で全然ついていけなかったこともありました。
でも自分でついていけるところを探し当てました。
そしてノリが悪い人のことを悪口言っていた気がします(笑)。

続きも楽しみにしております。
それと座波さんの本はやはり必須ですね。

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ブルー

浅見さん

ITベンチャーの人々ですが、彼らはいろいろな理由でITベンチャーにいます。浅見さんが言うように、夢も含めた明るい未来への志向性は確かにあると思います。もちろん昭和っぽい会社が嫌いだというのも明確にあると思います。

私も、かつて急成長中のITベンチャーに1年間出入りしていたことがあります。取引先だったのです。だから先方から内部事情もある程度お伺いしていました。

そこはその後上場しました。今では社名もメイン事業も変わっています。でも企業文化はそのままです。企業文化は自らの強みとして認識していたからです。

そこは企業全体を市場に対してオープンポジション化して進化しました。つまり企業文化以外は時代と市場に合わせて、何から何まで全部変えたのです。

このようなベンチャー企業の進化のプロセスでは頻繁な組織変更と事業変更があり、当然ですが人の出入りも多くあったようです。こういう激しい環境にハッタツの人がついていけるか否かということです。そしてこういうことこそが「ベンチャーのノリ」です。

また就労支援に眼を向けると、IT系の就労支援は私が活動していた時代から増えはじめたように思います。そして今はよく見かけます。扱うのはAI・ビッグデータ系やデザイン系です。こういう分野を扱うITベンチャーは多くありますね。

またベンチャーだけではなく、IT産業そのものが今は凄く盛況です。だから一般枠であれ障害者枠であれ、それなりの数の求人票が流通していると推測します。実際にクラスタの成人の方で、IT企業勤務の方もおられますね。IT産業は労働集約的なところもあって、そもそも昔から人を多く採用する業界でもあります。

私は他にもベンチャーを含めたIT業界の話題を多数持っています。ハッタツの人にとって、IT業界は比較的縁が深い世界のように思います。ベンチャーだろうが、外資だろうが、大手だろうが。

だからどこかのタイミングでどっとこむにIT業界の記事を残してもいいのかなと思ったりもします。この連載のコラムとして行うのか、仕事のお部屋でやるかはその時考えます。

宜しくお願い致します。

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yasu

ノリですが、自分のことは意外とわからないもので、実際にその場に入ってみたら意外と楽しかったり、その逆もあったりします。まあやってみるかと飛び込む(あるいは誘われても拒否しない)好奇心と、それから試行錯誤できる体力、気力は必要ですね(笑)。

ベンチャーと言えばIT系がまずは頭に思い浮かびますが、バイオベンチャーだとメガファーマにbuy-outされるのが目的のところが多かったりします。なので自分たちで製品を作り、売りを立てるのではなくて、いかにしてメガファーマに気に入ってもらえるかが命! IT系とは雰囲気が違って、一発屋が多い印象です。

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浅見淳子

実はフィットネス系でも地道にストックオプション買わせる会社もあります。夢をもって仕事をしている若者が多いですね。ベンチャーといえばITなんですが、同じような手法は他業界でも使われているんだなと思います。

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座波 淳

ブルーさん、yasuさん、浅見さん

> ノリですが、自分のことは意外とわからないもので、実際にその場に入ってみたら意外と楽しかったり、その逆もあったりします。

これ、キャリア研修でのポイントにしています。

学校教育や就職・転職業界の理想として「やりたいことをしよう」的な考え方があります。聞こえはいいのですが、いざ社会人になってからは意外と足かせになっていたりします。
やりたいことができたとしても、結果が出ない場合は向いていない、また、やりたいことができていなくても、結果が出ている場合は向いていると評価されるからです。
一部の方が大好きな自己効力感は後者で得られることになります。

さらに、学校関係者は「やりたいことができてるの?幸せだね!」となりがちですが、会社関係者は「やりたいことができてるの?で、結果は?」ということになります。

日本の会社の良いところの1つとして「社員を成長させる」ことがマネジメントの目的の1つとなっていることがあります。
にもかかわらず、「やりたいことをやりたい」「好きなことをやりたい」というお門違いな仕事観のままでは、結果的に自分の可能性を未知のままにしてしまうことになるわけです、成長させたいと思ってもらっているにもかかわらず、です。
成長させようと思ってもらえている段階では、好きとかやりたいは後回しにすることが、結果的に社会人としての未知の可能性を広げることにつながります。

それはハッタツと言われる人も同じです。いつからでも始められはしますが、土台を整えることが未知の可能性を広げることにつながります。早めに整えられた人はそれに気づかないうちに可能性が広がっているところがミソだったりします。

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yasu

座波さん

そうですね、当社でも360度評価が取り入れられており、定期的に評価されます(笑)
レポートに「ジョハリの窓」の説明が付いていたりします。

いろいろな事業を渡り歩いたり、一つの事業の中でも分野が全く異なるのを経験したりと、サラリーマンでは普通にありますし(会社の規模等にも依ります)、本当に皆さん立派にできるようになりますね。

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シア

やりたいかどうかではなくて「本気でやりたいかどうか」だと思うんですよね。
(当初いやだと思ったことなども含めて)いろいろなことをやってみて比較検討したのち本気でやりたいことに出会うという感じだと個人的に思ってます。
本気でやりたいと思っている人は相談を受けた時点でも「これからやりたい」ではなくて「今こういうことをやっているのだが続けていきたい」というような相談になると思うんですよ。
言葉よりも先に身体が動いていないと本当・本気ではないというか。
またそういうものに出会った人はバイトでも続けて道具とかもそろえると思うんですよね。
だからそういう人はあんまり相談にもならないと思います。

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シア

そういう意味でも皆さん同じだと思うんですよ。
「やりたい」ではなくすでにやっていることが続いているかどうかの問題でしかないですからね。
結果的にそうなっているというのがご縁というか出会いなんじゃないかなと。

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ブルー

<人材市場サバイバル>
連載第36回
第1部体験編
第4章_エージェント_その5_エージェントR
(3)_Rの求人票_①_ITベンチャー企業

前回はこちら
https://naosouhattatushogai.com/all/conference-room/1126/comment-page-3/#comment-9745

今回は、Rが持ってきた求人票を黒塗りで紹介しましょう。

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某・ITベンチャー企業

■企業情報(全て当時のもの)

・業種:Web系&■■系
(※当初はシステム設計・開発からスタートし、Web系に進出)
・設立 20●●年
・従業員数 ●●●人
・売上●●●億/年
・税引き後利益 ●億●●●●万

★3期連続増収増益

■待遇

・年収:●●●万~●●●万
・正社員
・オープンポジションにて募集

・定時:9時~18時
・土日祝:休
・週休2日(※「完全」かどうかは当時のノートに記載なし)
・通勤交通費支給
・社内に軽食ラウンジあり

■Rからコメント

・Rからの紹介実績あります
・障害者の方のご事情に合わせ配慮をし、その方の働き方を尊重する方針です

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■ヘッドハンターとの情報共有

企業への書類応募に関しては、前述したヘッドハンターとも情報共有をしていました。この企業についての共有事項は以下でした。

(ヘッドハンターへ共有)

平均年齢2●歳の、いかにも今時の成長中のベンチャーです。

ベンチャーのスピードやノリに私がついていけるかという問題もあるのですが、一方で大企業的な(社員数●●●人)風土も混ざっているということで取りあえず書類を投げることにしました。

もし面接に呼ばれた場合は、ベンチャーの風土と私のキャラの相性を見ようと思っています。また、この応募趣旨もRには伝えてあります。ノリで応募書類を投げた感じです。

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■結果

→書類選考にて不採用

■求人票に対するコメント

この求人票の最大特徴は、なんといっても正社員募集ということです。ただしこれには障害者採用特有のホンネとタテマエの世界がありまして、

・実は身体の人しか対象にしていないかも?
・精神/発達の人は契約社員からかも?

ということをすぐに読み取れないといけません。ただそれでも、障害者採用の世界においては貴重な正社員求人です。

また、既に売上が●●●億を超え、かつ利益率の高いIT企業ですので、障害者採用の求人票としてはなかなかに待遇が良いです。特に年収の上限額は、定型の人でもそこまで稼げたら恩の字という金額です。

■結果に対するコメント

結果は書類落ちでした。これは私の完全な推測に過ぎないのですが、落選した理由を2つ推測しました。

・実は身体の人を欲しがっていたか
・年齢が合わなかったか

年齢についてですが、当時の私は30代後半でした。それでもこの企業の創業社長より年上です。この企業にとっては当時の私でさえ「ご老公」です。扱いに困ることが想定されたかも知れません。

繰り返しますがこれらは私の推測です。

■この企業そのものに対するコメント

この企業は現在でも存続しています。その後も順調に成長を続け、売上は当時の4~5倍の金額になっています。そして従業員数も●●●●人を超えています。

この企業はよく広告を出しています。Web上だけではなく、電車の中やタクシー広告でも見かけるかも知れません。私は先日も電車の中でこの企業の広告を見かけました。

また社内環境整備にも気を使っており、私が受験した当時はオープンワークで総合評点が3点台だったように記憶していますが、今では4.0を超えています。そんな努力のかいあって、某団体の「はたらきがいのある会社」ランキングで表彰されたりもしています。

外から見るだけならこの企業は、イマドキの「カッコいいITベンチャー」です。最先端のオフィスビルに事業所があります。まるでカフェのようなオフィスもカッコいいし、社員も若くてカッコいいです。20代後半の人が中心の会社です。

おそらく組織風土もフラットで風通しよくなるように設計されているはずです。そうしないと現代ではオープンワークで4.0を超えることが難しくなります。

HPを見ると一度はオフィスに行きたくなります。私は当時、受かるか受からないかはともかく、カッコ良くてお洒落なオフィスに一度訪問してみたかったのです。かないませんでしたが。

では、この企業はハッタツにとって働きやすいのか。

この企業はベンチャーです。変化が激しいです。環境も、整っているところと整っていないところがあるでしょう。

かつ、こういう若くて先進的な会社は、年功序列や(シゴトできないのに)定期昇給といった「昭和仕様」を凄く嫌います。つまり実力主義であるはずです。そうでなければここまで企業成長しないはずです。

このような環境に馴染み、きちんと周りとコミュニケーションをとって生産性を出す人でないと採用選抜には受かりません。それは健常者であろうが障害者であろうがです。

特にIT産業は上意下達というよりはヨコのフラットなコミュニケーションの質がプロダクトの品質に対して如実に影響します。例えエンジニアでも、社内の人と良好なコミュニケーションを取って行かなくてはなりません。

例えばITに強い開発職志望のハッタツがいたとして、定型の営業やマーケ担当とコミュニケーションできるか否かです。採用選抜ではそこも観られます。

とはいえ私の推測ですが、障害のある人の場合こういう企業の採用選抜においてはエンジニアかデザイナーが多少有利なような気がします。手に職のある専門職です※。完全に私の推測に過ぎないのでご注意頂きたいのですが。

今回は以上です。次回は、Rが持ってきた求人票をもう一枚ご紹介します。

※追伸:

クラスタ各位には釈迦に説法ですが、発達障害の人の場合は何よりも土台が大事です。

以前にも書きましたが、専門性や凸の活用は土台が整ってからです。ここでいう土台は花風社的な意味です。例えば座波さんの本「発達障害でも働けますか?」のP32~、あるいは付録にまとめられている内容です。

つまりはクラスタ各位が日々注目なさっておられる領域です。

そして専門性や凸に拘泥しなくても、土台が整えば人材市場では取り合えず戦えるし、職場でも目先の仕事は回っていきます。

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